アパート8室の家賃設定|資料の想定から月4万円上げた調べ方

資料の想定賃料を書き直したイメージ 投資用不動産
小杉恵

小杉 恵(現役大家・宅建試験合格者)
武蔵小杉・川崎市・東京都内で実際に不動産の売買・賃貸経営をしながら、実体験に基づいた情報を発信しています。

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新築アパートの販売資料には、想定賃料が書かれています。その数字から利回りが計算され、融資の返済計画も組まれます。買う側が最初に見るのは、たいていこの想定賃料をもとにした利回りのほうです。

私が取得した1棟8室の資料には、満室で月68万円と書かれていました。今の満室総額は月72万円です。差は月4万円、年間では48万円になります。この4万円は、最初の募集で上乗せした分と、その後の退去1件で上げた分の合計です。

上げられたのは交渉が上手かったからではありません。周辺の家賃相場を、自分で調べ直したからです。それも一度ではありません。この記事では、その調べ方と、最後に金額をどう決めたかを書きます。1棟8室の1物件を追いかけた記録なので、同じ手順で同じ結果が出るという話ではありません。

資料の想定賃料を書き直したイメージ

資料に書かれていた想定賃料は、満室で月68万円

物件の概要は、川崎市内、東急沿線の駅から徒歩10分圏。木造2階建ての1K8室で、新築です。専有面積は20㎡台前半、賃料は1室あたり8万円台後半から9万円台前半になっています。

資料の68万円で表面利回りを計算すると6.2〜6.3%です。当時の私は表面6.5%以上という枠を引いて物件を探していたので、資料の数字のままでは枠に届いていませんでした。それでもこの物件を見送らなかった経緯はアパート1棟目を買うまでの11ヶ月に書いています。

想定賃料は、売る側が作った数字です。その金額で本当に埋まるのか、あるいはもっと取れるのかは、資料の中だけでは確かめられません。確かめる方法は一つで、同じエリアで今いくらの募集が出ているかを自分で見にいくことです。

相場の平均ではなく競合の在庫件数を数える

使ったのはSUUMOとアットホームです。特別なツールは使っていません。

ここでやったのは「平均賃料を調べる」ことではありませんでした。条件を変えながら、その条件で今いくつ募集が出ているかを確認する作業です。

平均値は、すでに決まった部屋や、今出ている部屋をならした数字です。入居を検討している人が実際に見比べるのは、平均ではなく、そのとき画面に並んでいる募集のほうです。

最初の値付けまでに、2回調べました。買うかどうかを決める段階で一度、引き渡しが近づいて募集を始める前にもう一度。新築は購入を決めてから募集開始までに間が空きます。その間に出ている募集は入れ替わるので、買うときの数字をそのまま値付けに使うことはできません。

条件は、固定するものと変えるものに分けました。

扱い 条件
固定する 専有面積の近い枠、バス・トイレ別、オートロック、フローリングなど一般的な設備
変える 築年数、駅からの徒歩分数、金額

固定するのは、入居を検討する人が最初に絞り込む条件です。ここを揃えておかないと、設備の違いなのか金額の違いなのかが分からなくなります。変えるのは、賃料に効く条件と、賃料そのもの。1回の絞り込みで答えを出さず、組み合わせを変えて何度も件数を見ました。

賃貸の検索結果を1件ずつ確かめるイメージ

築年数と駅距離を、どう変えて調べたか

新しい物件同士で比べる

まず築5年以内に絞りました。自分の物件は新築なので、まともに競合するのはこの帯です。

そのうえで、駅徒歩10分以内という枠の中を、より駅に近い区切りと、10分までの区切りの2つに分けて件数を出します。駅に近い側は件数が少なく、賃料の水準も上でした。この2つの差が、駅からの距離が賃料にいくら効いているかの目安になります。

自分の物件がどちらの区切りに入るかは分かっているので、あとはその区切りの中で何件と競合するのかを見ることになります。

築20年以内まで広げて、在庫の厚みを見る

次に、築年数の条件を20年以内まで広げて、同じ価格帯に何件出ているかを確認しました。

部屋を探している人は、築年数で完全に線を引いて探すわけではありません。新しい物件が予算に対して高すぎれば、築年数を落として広い部屋や安い部屋に移ります。金額が高すぎると、多少条件を落としてでもそちらを選ぶ人が出てくるということです。

だから確認したかったのは、自分が考えている金額を出すなら、もっと条件の良い築古が選べてしまう位置にいないか、でした。ここで在庫が厚ければ、新築であることの強みは薄くなります。

最後に置いたのは、競合が数件しかない金額

条件を固定したまま、上限の金額を少しずつ上げて、その金額までに何件の募集が出ているかを数えていきます。上限を上げれば範囲が広がるので、件数は増えていきます。自分の物件と同じ条件帯では、自分が出そうとしている金額まで広げても、数件しか出てきませんでした。

この水準に決めました。築5年以内で駅に近い部屋の相場には幅がありますが、その下限より少し高いあたりです。使ったのは、募集を始める前に調査した数値です。

狙いは、検索した人の一覧で上のほうに出ることです。競合が数件なら自分の部屋も画面に収まりますが、件数が二桁になると後ろに回り、そもそも見てもらえません。金額を上げるほど、その予算で出てくる部屋は増えます。埋もれるうえに、条件の良い部屋とも並ぶことになります。

上乗せした幅は、1室あたり4,000円から6,000円です。部屋ごとに向きや条件が違うので、一律ではありません。満室時の総額は、資料の68万円に対して4万円近く上がりました。

8室が埋まるまで約1ヶ月

結果は、募集開始から約1ヶ月で満室になりました。

この物件は工事が遅れて引き渡しが後ろにずれました。その埋め合わせとして、引き渡し後の1ヶ月について建築会社から満室想定の家賃が補填されています。8室を埋めたのはこの1ヶ月です。

資料の想定より高い金額で出しても、埋まるまでの時間は延びませんでした。ただ、新築で設備も最初から揃っていたので、金額の設定だけで決まった結果ではありません。

退去が出た1室は、さらに2,000円上げて出した

運用2年目に、退去が1件ありました。空室が何週間だったか、原状回復費をどう処理したかは新築アパート8室の実際の収支に書いています。

再募集にあたって、賃料を2,000円上げました。判断の材料は2つです。前の設定でも1ヶ月で埋まっていたこと。そして同じ条件で調べ直したとき、周辺の募集価格が前より下がっていなかったことです。

これで今の満室総額は月72万円になっています。

ただ、退去のたびに上げられるという話ではありません。やっているのは最初と同じで、条件を固定して件数を調べ直すことです。条件の良い競合が増えていれば据え置きますし、場合によっては下げる判断もあります。

決めたのは自分で、管理会社には根拠を示した

賃料は、管理会社が提案してくれることもあります。今回は先に自分で調べた結果を渡し、この金額で募集してほしいと伝えました。

管理会社にとって、決まらない期間が延びることは避けたいはずです。そのぶん慎重な金額になりやすい面はあります。どちらが正しいという話ではなく、提示した金額に根拠があるかどうかだと考えています。「このあたりが相場だと思う」では議論になりませんが、「この条件で数えたら競合は数件だった」なら、相手も確かめられます。

家賃の決め方は、売るときの値段の決め方でもある

入居者がいるまま売る場合、値段は家賃から決まります。近くで似た部屋がいくらで売れたかを積み上げる、自分で住む人向けの査定とは、計算の仕組みが違います。この決まり方はオーナーチェンジ物件の売却相場で整理しました。

月4万円は、年にすると48万円です。この48万円を、買主が求める利回りで割ると値段の差が出ます。6.0%で割れば800万円、7.0%なら約690万円。求められる利回りが高いほど、同じ家賃でも値段は低くなります。実際の査定では、家賃から管理委託料などの経費を引いた額で計算します。上の数字はその前の、大まかな目安だと思ってください。

ただし、相場から外れた高い家賃は逆に働くこともあります。買主から見れば、更新のときに下げざるをえない部屋、退去したら埋まらない部屋に見えるからです。上げられるだけ上げるのではなく、根拠のある水準に置くことが、結局は売るときにも効いてきます。

家賃の差が売るときの値段の差になることを示す図

小杉恵のひとこと
やったのは、条件を変えて検索し直すことです。そうやって決めてきた金額が、年48万円の差になって毎年続いています。買ったあとに変えられる数字は多くありませんが、賃料はその数少ない一つです。

よくある質問

Q. 管理会社や不動産会社が出した想定賃料は、信用できないということですか?
A. そうではありません。ただ、その数字がどの募集と比べて出されたものかは、資料に書かれていないことがほとんどです。返済計画の前提になる数字なので、根拠は自分で確かめておきたいところです。

Q. 高く設定すると、空室期間が延びませんか?
A. 延びる可能性はあります。だから金額を決める前に、その水準で競合が何件いるかを確認しました。今回は募集開始から1ヶ月で8室が埋まりました。

Q. 退去のたびに家賃は上げられるものですか?
A. 上げられるとは限りません。今回上げたのは、前の設定でも1ヶ月で埋まった実績があり、調べ直したときに周辺の募集価格が下がっていなかったからです。相場が動いていなければ据え置きますし、条件の良い競合が増えていれば下げる判断もあります。なお、ここで書いているのは退去後の新規募集の話です。入居中の方に増額をお願いするのは、まったく別の手続きになります。

まとめ

資料に書かれた想定賃料は満室で月68万円、退去1件の再募集まで経た今の満室総額は月72万円です。年間で48万円、表面利回りで0.3ポイント以上の差になります。

そのためにやったのは、平均賃料を調べることではなく、条件を固定して競合の在庫件数を調べることでした。専有面積と一般的な設備を揃え、築年数・駅からの距離・金額を変えながら、その条件で今いくつ募集が出ているかを見る。築5年以内で駅に近い側の相場帯を押さえ、築20年以内まで広げて在庫の厚みも確認したうえで、競合が数件しかない水準に置いています。

結果は募集開始から1ヶ月で8室、運用2年目の退去1件は2,000円上げて再募集しました。資料の数字をそのまま使っていたら、この差は毎年消えていたことになります。

4件の物件について、持ち続けるか手放すかをそれぞれどう判断してきたかは不動産の持ち方・手放し方にまとめています。

この記事を書いた人
小杉恵

現役大家(宅建試験合格者)。武蔵小杉・川崎市・東京都内で投資用不動産(新築アパート・中古マンション・戸建)を自ら運用しながら、実体験に基づいた「分かりやすく正直な」不動産売却情報を発信しています。

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