オーナーチェンジ物件の売却相場|査定額が下がる理由と対策

賃貸中のマンションの売却・査定・家賃収入をイメージした写真 投資用不動産
小杉恵

小杉 恵(現役大家・宅建試験合格者)
武蔵小杉・川崎市・東京都内で実際に不動産の売買・賃貸経営をしながら、実体験に基づいた情報を発信しています。

本記事は広告を含みます。

賃貸中のマンションを売ろうとしたら、家賃収入が入っているはずなのに査定額が思ったより低い。オーナーチェンジ物件の売却でよく聞く戸惑いです。首都圏エリアで投資用不動産を運用する中で、私自身も査定を受けてこの計算の仕組みを実感したことがあります。なぜ査定額が下がるのか、その仕組みと、売却を進めるべきかどうかの判断材料をこの記事で整理しました。

賃貸中のマンションの売却・査定・家賃収入をイメージした写真

オーナーチェンジ物件とは

オーナーチェンジ物件とは、賃借人が入居した状態のまま所有者だけが変わる不動産取引を指します。買主から見れば、購入した直後から家賃収入が得られる投資用物件として扱われるのが特徴です。相続で賃貸中のマンションを引き継いだ、あるいは自分で購入した投資用マンションを手放したい、といったケースがこれにあたります。

見落とされがちなのが、もともと自宅として購入した物件を、転勤や住み替えで自分が住まなくなったのを機に賃貸へ出し、その後に売却するというパターンです。この場合も、売却時に賃借人が入居していればオーナーチェンジ物件として扱われます。純粋な投資目的で買った物件と経緯は違いますが、査定の考え方は同じです。ただし後述する税金の扱いだけは、元が自宅かどうかで結論が変わる可能性があるため注意が必要です。個人向けの売却がうまくいかず賃貸に切り替えた経緯そのものは武蔵小杉 中古マンションが売れないで書いています。

実需物件とオーナーチェンジ物件、査定の考え方の違い

「相場」と聞くと、エリア別の価格帯の一覧を思い浮かべるかもしれませんが、オーナーチェンジ物件の相場はそうした価格表ではなく、家賃収入と利回りから逆算して決まります。まずはこの計算の仕組みを押さえておきましょう。

自分で住むためのマイホーム(実需物件)の査定は、近隣の類似物件の成約事例を積み上げる「取引事例比較法」が基本です。一方、オーナーチェンジ物件は買主にとって収益を生む金融商品としての性格が強いため、「収益還元法」という、物件が生み出す家賃収入から価格を逆算する方法で査定されるのが一般的です。この査定方法の違いは、複数の不動産会社・不動産ポータルの解説で共通して説明されている考え方です。

実需物件は取引事例比較法、オーナーチェンジ物件は収益還元法で査定される仕組みを示す対比図

収益還元法では、年間の家賃収入から諸経費を引いた「純収益」を、買主が期待する利回り(還元利回り)で割って価格を算出します。同じ家賃収入でも、期待される利回りが高いエリア・築年数の物件ほど、算出される価格は低くなる計算です。

例えば、月額家賃10万円(年間家賃収入120万円)の物件で、管理費・修繕積立金などの経費を家賃の20%とすると、年間の純収益は120万円×(1−20%)=96万円です。これを還元利回り5%(本記事後半で解説する東京23区の区分マンションの目安)で割ると、96万円÷5%=約1,920万円という価格が算出されます。同じ物件でも還元利回りが1ポイント上がって6%になると、96万円÷6%=約1,600万円まで下がる計算になり、還元利回りの設定次第で価格が大きく変わることが分かります。ここでの数字はあくまで計算方法を理解するための例であり、実際の相場を示すものではありません。自分の物件で試算する際は、実際の家賃収入・経費率を当てはめて計算してみてください。

査定額はどのくらい下がるのか

オーナーチェンジ物件の売却価格は、空室の同条件物件と比べて10%程度下がる傾向があると、複数の不動産関連メディアで説明されています。入居中のため内覧のハードルが上がること、住宅ローンではなく投資用ローン(金利が高め)を使う買主が中心になることなどが理由として挙げられています。

ある一括査定サービスの解説記事では、実際の成約事例として東京都江戸川区で約17%、神奈川県横浜市で約14%、千葉県船橋市で約13%、千葉県千葉市で約25%、空室物件より安く成約したケースが紹介されており、「10〜20%程度の価格差が生じることがある」としています。これは一つの調査記事が示す個別事例であり、算出方法の詳細までは公開されていないため、「必ずこの数値になる」という相場観としてではなく、値下がり幅のイメージとして参考にしてください。

逆に、相場より高い家賃で入居者がついている場合は、収益還元法の計算上プラスに働くこともあります。ただし、更新のタイミングで家賃を相場に合わせて下げる圧力がかかりやすく、買主側もそのリスクを織り込んで価格交渉してくることが多い点には注意が必要です。

利回り相場の目安(東京23区・首都圏)

収益還元法による査定額のイメージを持つには、投資用不動産の表面利回り(年間家賃収入÷物件価格)の水準を知っておくと役立ちます。ここで押さえておきたいのは、利回りはエリアによって大きく変わり、物件価格の高い東京23区や横浜などの首都圏は、全国平均より利回りが低く出やすいという点です。価格が高い分、同じ家賃でも家賃収入の割合(利回り)は下がるためです。

収益物件情報サイト「健美家」が公開している市場動向レポート(2026年1〜3月期、同サイト掲載物件が母集団)では、東京23区の中古区分マンションの平均的な表面利回りはおおむね5%前後でした。同じ区分マンションでも築年数による差が大きく、築浅(築10年未満)では3〜4%台まで下がり、築古(築20年以上)になると5〜6%台まで上がる傾向があります。なお、この数値は物件が掲載(登録)された時点の価格をもとにした利回りであり、実際に成約した価格に基づく数値ではない点には留意してください。

物件種別(東京23区・中古) 表面利回りの目安
区分マンション おおむね5%前後(築浅3〜4%台/築古5〜6%台)
一棟アパート 5%台後半
一棟マンション 5%前後

神奈川県(横浜市・川崎市など)は、東京23区より物件価格が抑えられる分、利回りはやや高めに出やすい傾向があります。首都圏(東京・神奈川・埼玉・千葉)全体でみた一棟マンションの平均は6%前後という調査もあり、同じ物件種別でもエリアの価格水準によって数ポイント動きます。自分の物件が武蔵小杉や横浜のように価格の高いエリアにある場合は、全国平均より低めの利回りが「その地域では普通」ということも起こり得ます。武蔵小杉エリアのマンション価格帯そのものを詳しく知りたい方は、武蔵小杉のマンション相場を最新データで解説もあわせて読んでください。

区分マンションのオーナーチェンジ物件を売る場合は、提示された査定額に対して「年間家賃収入÷査定額」で表面利回りを計算し、こうしたエリアの水準と比べてみてください。エリア相場より利回りが極端に高ければ査定額が控えめすぎる可能性があり、逆に極端に低ければ、その価格では買い手がつきにくく成約まで時間がかかる可能性があります。いずれにしても、複数社の査定を取って根拠を比較するのが確実です。

「空室にしてから売る」か「オーナーチェンジのまま売る」か

売却方法には大きく2つの選択肢があります。

オーナーチェンジのまま売る

賃借人に退去してもらう必要がなく、家賃収入を途切れさせずに売却まで進められます。買主は投資用ローンを使う投資家に限られるため、実需向けの一般的な仲介より買主層は狭くなりますが、投資用物件を探している買主にとっては「すぐに収益が得られる物件」として評価される面もあります。

賃借人に退去してもらい、空室にして売る

実需向けの買主も対象に含められるため、査定額そのものは上がりやすくなります。ただし、賃借人に退去してもらうための交渉(普通借家契約であれば、正当事由や立退料の検討が必要になる場合があります)と、退去から売却完了までの家賃収入の空白期間というコストが発生します。定期借家契約であれば契約期間満了で契約終了となるため、退去交渉のハードルは下がります。

どちらが有利かは、賃借人との契約形態(普通借家か定期借家か)や、家賃収入を手放すタイミングをどこまで先延ばしできるかによって変わります。まずは現状のまま査定を受け、実需向けに切り替えた場合との差額を比較してから判断するのが現実的です。

ここまでの2つはいずれも仲介での売却を前提にしていますが、とにかく早く現金化したい場合は、賃借人がいる状態のまま不動産会社に直接買い取ってもらう「買取」という方法もあります。仲介との違いは武蔵小杉のマンション買取で解説しています。

投資用物件を無料査定する

査定を依頼する際に用意しておきたい書類

本人確認書類や登記関連書類など、査定依頼時に一般的に必要な書類は武蔵小杉の不動産査定はどこがいい?で解説しています。オーナーチェンジ物件の場合は、これに加えて以下の書類も用意しておくと、査定・売却がスムーズに進みます。

  • 賃貸借契約書(現在の賃借人との契約内容が分かるもの)
  • レントロール(家賃・敷金・契約期間などを一覧化した書類。管理会社に依頼すれば作成してもらえることが多い)
  • 直近の家賃入金履歴(滞納の有無が分かるもの)
  • 管理費・修繕積立金の支払い状況が分かる書類

この4点は、買主が購入を判断するときに見ている材料とほぼ一致します。入居中の物件は買主も室内を確認できないため、判断材料がこれらの書面に限られるからです。買う側がこの4点から何を読み取ろうとしているかはオーナーチェンジ物件を買う側のリスクにまとめました。揃えておくと査定が進めやすくなるだけでなく、買主の不安材料を先に潰しておくことにもつながります。

小杉恵のひとこと
私自身、首都圏エリアで運用している投資用物件の査定を受けたところ、表面利回りは5%台と首都圏の中では比較的高水準でした。売却すればまとまった資金は得られますが、保有し続けた場合の家賃収入や利回りの方が魅力的であり、「今あえて手放す理由はない」という結論に至りました。焦って判断せず、売却時の手取り額と保有し続けた場合の収益を、具体的な数字で比較検討することをおすすめします。

税金の注意点:3,000万円特別控除は原則使えない

マイホームを売却する場合、譲渡所得から最大3,000万円を控除できる「居住用財産の3,000万円特別控除」という特例がありますが、これは自分が住むための住宅を対象にした制度です。オーナーチェンジ物件のように人に貸している(自分は住んでいない)投資用不動産には、原則としてこの特例は適用されません。売却の基本的な流れや仲介手数料の考え方は武蔵小杉でマンションを売却する完全ガイドと共通する部分が多いですが、税金の計算だけは前提が異なる点に注意してください。減価償却の扱いなど投資用物件特有の論点もあるため、正確な税額は税理士に確認することをおすすめします。

保有期間5年を境に税率が大きく変わる

オーナーチェンジ物件に限らず、不動産を売却した際の譲渡所得税は、売却した年の1月1日時点での所有期間が5年を超えているかどうかで税率が大きく変わります。5年以下(短期譲渡所得)は所得税・住民税・復興特別所得税を合わせておよそ39.63%、5年超(長期譲渡所得)はおよそ20.315%と、約2倍近い差があります。さらに、保有期間中に計上してきた減価償却費の分だけ取得費が目減りするため、譲渡所得(=課税対象になる利益)自体が想定より大きく出やすい点にも注意が必要です。「いつ売るか」によって税負担が大きく変わりうるため、売却を急がないのであれば、保有期間が5年を超えるタイミングかどうかも判断材料に加えておくとよいでしょう。諸費用・税金を差し引いた手取り額の目安は、不動産売却の手取り額シミュレーターで試算できます。正確な税額は、自分の取得費・減価償却の状況を踏まえて税理士に確認してください。

元は自宅だった物件を賃貸に出して売る場合の例外

ここで注意したいのが、先に触れた「もともと自宅として住んでいた物件を、住み替えなどで賃貸に出してから売る」パターンです。この場合、一定の期間内に売却すれば、賃貸に出していた期間があっても居住用財産の特例を使える可能性があります。国税庁は、この特例について「住まなくなった日から3年を経過する日の属する年の12月31日までに売る」ことを条件のひとつとして挙げており、住まなくなった後の用途は問わない(賃貸に出していてもよい)としています。

この「3年を経過する日の属する年の12月31日まで」という数え方には注意が必要です。単純に「住まなくなってから3年」で区切られるわけではなく、住まなくなった月によって実際の猶予期間に幅が出ます。例えば1月に住まなくなった場合は、3年後の1月から その年の年末(12月31日)まで期限が延びるため、実質的にはほぼ4年近く猶予があることになります。逆に12月に住まなくなった場合は、3年後の12月末が期限となり、猶予はほぼ3年ちょうどです。「もう3年過ぎたから対象外だ」と自己判断で諦めず、住まなくなった具体的な年月から数え直してみてください。「賃貸に出しているから投資用物件として扱われ、控除は一切使えない」と思い込んで、使えたはずの特例を逃すのはもったいないケースです。ただし、親族など特別な関係者への売却や、他の特例と併用している場合など適用されないケースもあります。自分のケースが対象になるかは、必ず税理士や税務署に確認してください。

よくある質問

Q. オーナーチェンジ物件は空室にしてから売った方が高く売れますか?

A. 一般的には、実需向けの買主も対象にできる分、空室にした方が査定額は上がりやすい傾向があります。ただし、賃借人の退去交渉の手間や、退去から売却完了までの家賃収入の空白期間というコストが発生するため、単純に「空室の方が得」とは言い切れません。契約形態(普通借家か定期借家か)を踏まえて比較検討してください。

Q. 査定額が家賃収入から計算されるなら、家賃を上げれば査定額も上がりますか?

A. 理論上はその通りですが、相場から大きく外れた高い家賃は、更新時の値下げリスクや空室リスクとして買主側に警戒され、かえって交渉材料にされることがあります。周辺相場に見合った適正な家賃であることの方が、査定上は評価されやすい傾向にあります。

まとめ

オーナーチェンジ物件の査定額が実需物件より低く出やすいのは、査定方法そのものが違う(収益還元法で計算される)ことが理由です。この仕組みを理解しておけば、提示された査定額が妥当な水準かどうかを自分でも判断しやすくなります。そもそも売るべきか持ち続けるべきかで迷っている段階であれば、私が4件の不動産で何を基準に決めてきたかを現役大家が語る不動産の持ち方・手放し方で整理しています。空室にするかオーナーチェンジのまま売るか、保有を続けるかも含めて、まずは複数社の査定を比較してみてください。私自身が複数社を比較して1社に絞った経験は不動産会社の選び方で私が間違えたことで書いています。

保有か売却か、無料査定で比較する

この記事を書いた人
小杉恵

現役大家(宅建試験合格者)。武蔵小杉・川崎市・東京都内で投資用不動産(新築アパート・中古マンション・戸建)を自ら運用しながら、実体験に基づいた「分かりやすく正直な」不動産売却情報を発信しています。

小杉恵をフォローする
投資用不動産
シェアする
小杉恵をフォローする