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これまでに4件の不動産を所有してきました。今も保有しているのが2件、手放したのが2件です。この記事で書くのは、査定額の推移や売却手続きといった実務的な話ではありません。それぞれの物件を「持ち続けるか、手放すか」をどう判断してきたかという、判断基準そのものです。実務の詳細は、物件ごとに書いた別の記事に譲ります。
自分でも意外だったのは、同じ時期に持っていた物件でありながら、まったく違う基準で判断していたことでした。

いま持っている2件と、手放した2件
| 物件 | 買ったときの狙い | その後の狙い | 現況 |
|---|---|---|---|
| 首都圏の1棟アパート(10戸未満) | 家賃収入 | 変わらず | 保有中 |
| 戸建(東京都内) | 自宅 | 家賃収入 | 保有中 |
| 中古マンション2LDK(武蔵小杉) | 自宅 | 家賃収入 | 売却済み |
| アジアの区分マンション3LDK | 売却益 | 変わらず | 売却済み |
1棟アパートは、相場より安く取得できたことをきっかけに、家賃収入を積み上げる目的で今も持ち続けています。戸建はもともと自宅として使っていたものでした。今は賃貸に出し、家賃収入を得る形にシフトしています。武蔵小杉の中古マンションも、住まいとして購入した部屋でした。その後の事情で賃貸に切り替えた時期を経て、最終的には入居中のまま売却しています。賃貸に切り替えた経緯や売却プロセスは他の記事で詳しく扱っているため、ここでは触れません。アジアの区分マンションは、家賃ではなく売却益を狙って購入した物件で、5年保有した後に手放しました。
4件のうち2件は、最初から家賃収入や売却益を狙って購入した物件です。残り2件は、もともと自宅として購入したものでした。狙いは、買った瞬間に固定されるとは限りません。戸建のように途中で変わることがあり、変わった時点で判断基準も入れ替わります。4件を並べて気づいたのは、持ち方と手放し方は、物件ごとに違うのではないということです。その物件で何を狙っているかで決まります。
家賃を狙う物件を、持ち続けている6つの条件
1棟アパートと戸建という、家賃収入を狙う2件については、持ち続けるかどうかを次の6つの条件で判断しています。
空室が埋まる速さ
過去の入居者入れ替えは、どれも2〜3週間で決着しています。戸建の募集も約3週間で決まりました。1ヶ月を超えると、正直なところ不安になります。次の入居者が決まる速さは、「その物件を持ち続けられるか」という精神的な体感に直結する部分です。
立地
基準にしているのは「駅徒歩7分以内」です(戸建は徒歩5分、都心まで10数分)。この基準から外れる物件は、そもそも検討対象にしていません。
家賃の動向
入居者が入れ替わるたびに、家賃を上げられているかどうかを見ています。実績として5,000円アップした部屋もありますが、物件や部屋によってばらつきがあり、すべてが同じように上がっているわけではありません。ただ、家賃が下がっていく物件を持ち続ける理由はないと考えています。
手残り
ローン返済や経費を差し引くと、手元に残るのは家賃収入のおよそ半分です。この割合が、保有を続けるかどうかの採算ラインになっています。
手間
管理会社に業務を委託しています。自分の手がかからないことは、保有を続ける判断にかなり大きく影響しています。利回りが良くても、手間が増え続ける物件を持ち続ける自信はありません。
取得価格
相場より安く買えていることです。これは戸建にも共通しており、安く購入できたことがそのまま高い利回りにつながっています。他の5つの基準と大きく違うのは、ここだけです。空室期間や家賃、手間のかけ方は運用しながら改善できますが、取得価格は買った瞬間に決まるため、後からどう頑張っても変えられません。

安く買えたのは、交渉が上手かったからではない
では、どうすれば安く買えるのでしょうか。私の場合、交渉して大幅に値切ったわけではありませんでした。もともとは別の土地を検討しており、そこに問い合わせたところ、その土地にはアパートが建てられないことが判明しました。話はそこで終わるはずでしたが、対応してくれた担当者が、自社で手掛けているアパートを代わりに紹介してくれたのです。その結果、市場に広く出回る前の段階で情報をもらうことができました。安く買えたのは交渉術のおかげではなく、別の用件で動いていたからこそ、偶然良い情報が回ってきたからです。取得価格自体は後から動かせない条件ですが、購入前の動き方次第でチャンスを作ることはできます。
6つの条件のうち、私が特に重視しているのは「立地」と「取得価格」です。立地が良ければ賃貸に出しやすく、空室が埋まる速さも家賃の上昇も後からついてきます。また取得価格が低ければ、多少想定が外れても採算が崩れません。逆に言えば、この2つは購入前にすべて決まってしまう条件です。運用努力でどうにかできるのは、残りの4つのほうだと考えています。
売却益を狙う物件は、基準がまったく違った
アジアの区分マンション3LDKは、これらとは目的が異なる物件でした。狙いは家賃収入ではなく売却益です。家賃収入を目的としていないため、持ち続けた場合と売った場合の金額比較をしていません。狙いが違えば、比べるべき数値や指標も違ってきます。
違いは、見ている項目そのものに現れました。家賃を狙う2件では、空室が何週間で埋まったか、退去のたびに家賃を上げられているかをチェックし続けています。しかし売却益狙いの物件では、そのどちらも判断材料にしていませんでした。家賃がいくら積み上がろうと、狙いが売却益である以上、「売るか・持つか」の答えは変わらないからです。代わりに見ていたのは相場の動きと周辺の状況でした。同じ「持ち続けるか、手放すか」の判断でも、家賃を狙う物件で見ているのは物件の中で起きていることで、売却益を狙う物件で見ているのは物件の外(市場)で起きていることでした。
この物件は5年保有して手放しました。最初に「何の目的で持つか」を明確にしておかないと、売り時の判断はどうしてもぶれてしまうというのが、この経験から得たリアルな実感です。
天井は、過ぎてからしか分からない
売却益を狙う以上、できれば価格の天井で売り抜けたいと考えていました。しかし、天井がいつ来るかは誰にも分かりません。相場と周囲の状況を見ながら判断するしかありませんでした。
売却を決断した材料は2つあります。1つは、これから価格が下落しそうだと感じたこと。もう1つは、周辺で売りに出されている物件が増えていたことです。値下がり自体はまだ起きていませんでしたが、値下がりの前兆として「売りに出す人が増える」という現象が先行することが多いと考えています。価格は結果として動くものであり、その前にまず「売り手の数」が動くのです。
この海外物件において、私が把握できたのは現地から届く相場情報と周辺状況までで、細かく追える状態ではありませんでした。しかし国内物件であれば、同じことをもっと具体的に調査・確認できます。自分の物件と同じマンション内で今何戸が売りに出されているか、近隣に似た条件の物件がどれくらい並んでいるかは、不動産ポータルサイトで調べられます。大切なのは一度見て終わりにせず、数ヶ月おきに同じ条件で検索し、増えているか・減っているかという変化のトレンドを掴むことです。以前見た物件が売れずに残っており、そこに新しい売り出し物件が積み重なっている。掲載が長引いている物件が目立ち始める……こうした状態は、買い手より売り手が多くなり始めたサインだと考えています。
結果として、天井を少し過ぎたあたりで売り抜けることができました。振り返ると「もう少し早く売っておけばよかった」という感覚は今も残っています。しかしこれは判断を誤った証拠ではなく、天井を狙う以上どうしても付いてくる感覚だと捉えています。武蔵小杉の中古マンションでも、値上がりした瞬間が売り時ではなかったという経験をしました。詳しい経緯は売り時は値上がりした瞬間ではなかったで書いています。
情報が取れない物件は、判断を早めるしかない
アジアの区分マンションは、管理も売買も現地にすべて任せていました。自分で情報収集をするのが難しい面があり、売ると決めてから成約までは想定より時間がかかりました。売却方法の選択肢が限られていたことも難点でした。
これが国内の物件であれば状況は異なります。通常の仲介で売る、入居中のままで売る、買取業者に買い取ってもらうなど、複数の手放し方から選べます。オーナーチェンジ物件の売却相場のように入居中のままで売る選択肢もあれば、武蔵小杉のマンション買取のようにスピードを優先する選択肢もあります。手放し方の選択肢を自分自身で選べることは、当たり前のようでいて、実は大きな価値だと感じています。
情報が取れないまま判断を迫られるのは、売る側だけではありません。入居中の部屋を買う側から見たときに何が見えないのかはオーナーチェンジ物件を買う側のリスクで書いています。
小杉恵のひとこと
自分で情報を取りに行ける物件は、確信が持てるまで待てます。しかし情報が満足に取れない物件は、兆しが見えた段階で動くしかありません。振り返ると、駅からの距離や都心アクセスといった立地の基準は、実は「自分の手が届く範囲かどうか」の基準でもあったのだと感じます。
アパートを売るとしたら、どうなったときか
1棟アパートは木造のため、築10年・15年を迎えるタイミングで大きな売却益が出るなら、その時点で手放したいと考えています。木造は建物の価値の下がり方が早く、売却益をしっかり狙える期間が限られるというのが所有者としての実感です。ただし、相場より安く取得できており空室も埋まり続けているため、現時点で困っていることはありません。
自宅を賃貸に回した戸建も同様です。立地が良く高い賃料が取れること、安く買えていて利回りが良いことが、今も保有し続けている理由です。今のところ、具体的にどうなったら売るかという条件は決めていません。
「困って売る」のではなく、「良い条件が来たら売る」。これが今の私の立ち位置です。持ち続ける条件を満たしている物件ほど、手放す理由も前向きなものになります。冒頭で触れた通り、持ち方と手放し方は物件ごとに違うのではなく、その物件で何を狙っているかで決まります。目的が明確である限り、保有する判断も手放す判断も、同じ1つの基準の上にあります。なお、実際に売る段階で出ていく費用の実額はオーナーチェンジ物件を売った費用の実額にまとめています。
ただし、「良い条件」かどうかは、今いくらで売れるかを知っておかなければ判断できません。売る予定がなくても、手持ちの物件の資産価値は定期的に確認するようにしています。
よくある質問
Q. 家賃収入と売却益、どちらを狙うか最初に決める必要がありますか?
A. 決めておいたほうがいいと考えています。私自身、売却益を狙う物件では家賃収入のシミュレーションや比較を一切しませんでした。狙いが曖昧なまま保有していると、価格変動の兆しや周りの状況に振り回され、売り時の判断がぶれやすくなります。
Q. 市場に出る前の未公開物件は、どうすれば手に入るのですか?
A. 特別なコネやルートがあったわけではありませんでした。私の場合は、別の土地について問い合わせをしたことがきっかけで、その流れで話が回ってきました。狙って入手したというより、行動していたから情報が届いたという順番です。逆に言えば、待っているだけの状態では回ってこなかったと思います。
Q. 自宅を賃貸に出すのと売るのは、どちらが得ですか?
A. 一概には言えず、立地・想定賃料・取得価格のバランスによって変わります。私が戸建を賃貸に回したのは、立地が良く高い賃料が見込めること、安く購入できていて利回りが高いことの2点が揃っていたからです。これらの条件が揃わない場合は、売却のほうが合理的なこともあります。
Q. 遠方や海外の物件は持たないほうがいいですか?
A. 一概に否定はしませんが、情報の取りやすさが判断のスピードに直結する点は覚悟しておく必要があります。私自身、海外の区分マンションでは現地情報の収集に苦戦し、売却を決意してから成約に至るまで想定より時間がかかりました。また、制度や税制も国によって大きく異なるため、検討する際は専門家への確認をおすすめします。
まとめ
4件の物件を振り返って改めて感じるのは、持ち方と手放し方を分けているのは物件の種類ではなく、その物件で何を狙っているかだということです。家賃収入を狙う物件は、空室の埋まりやすさ・立地・家賃動向・手残り・手間・取得価格という6つの条件で持ち続けるかどうかを判断してきました。一方、売却益を狙う物件は、天井の完全な見極めが難しい中で、価格下落の兆候と売り物件の増加という2つの変化から判断を下しました。
また、自分で情報を集められる環境にあるかどうかも、判断スピードを大きく左右します。自分の手が届く範囲にある物件ほど、確信が持てるまで粘り強く保有できます。
売却全体の流れは武蔵小杉でマンションを売却する完全ガイドに、実際に入居中のまま売却したときの記録はマンション売却の体験談にまとめています。
「困って売る」のではなく、「良い条件が来たら売る」。これが、4件の運用を経てたどり着いた私のスタンスです。
