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同じ部屋を、2度売りに出したことがあります。1回目は買主が決まらないまま賃貸に回り、数年後にもう一度売り出しました。値上がりしたから2回目を決めたのだろうと思われることがあります。ですが実際には、値上がりを根拠にしていたのは1回目のほうで、その値付けは市場に受け入れられませんでした。

1回目は住み替えが理由だった。値上がりは背中を押す材料だった
1回目に売ろうとしたのは、都内の戸建てへの住み替えが先に決まったときでした。住み替え先を買うための資金として、それまで住んでいたマンションを売る必要があった、というのが一番の理由です。売るかどうかを相場から考えたわけではありません。
ただ、市況をまったく見ていなかったわけではありませんでした。同じマンションの同じ間取りの部屋が、購入時と比べてかなり高い価格で売れていたのを知っていたからです。それなら相応の価格で売れるだろうという見込みは持っていました。売る理由そのものではありませんが、決断の背中を押す材料にはなっていたと思います。
投資家としての判断ではなく、ごく普通の住み替えです。次の住まいが決まり、今の家を売って資金にする。同じ状況の方は少なくないと思います。
「駅近・眺望だから高い」は私の評価で、市場の評価ではなかった
売り出し価格を決めるとき、基準にしたのは同じマンションの同じ間取りの成約事例でした。エリア全体の平均でも統計データでもなく、同じ建物の実際の取引です。ここまでは、大きく外していなかったと思います。
問題は、その基準にどんどん上乗せしていったことでした。その部屋は私の部屋より下の階だったので、自分の部屋はもっと高いはずだと考えました。その成約から数年が経ち、市場全体がさらに上がっていたので、その分も足しました。さらに駅から近く眺望も良い部屋なので、更に上乗せしました。こうして出来上がったのが、あの強気の売り出し価格です。
ひとつずつ見れば、どれも間違っていません。階が上がれば価格が上がりやすいのは一般的な傾向ですし、市場が上がったのも、駅近であることも眺望が良いことも事実です。ただ、正しい根拠でも全部を価格に足していくと、市場が付ける金額から離れていきます。3社を比較した際、大手の1社(不動産会社の選び方で私が間違えたことで触れた会社B)は「築年数を考えるとそこまで高くは売れない」と慎重な見立てを示していましたが、当時はその意見を割り引いて聞いていました。反応が薄いまま数週間が過ぎ、6〜7%値下げしたところで内覧が増え始めました。この価格差が、市場からの回答だったのだと思います。会社によって見立てが割れること自体は珍しくなく、複数のタイプの会社に声をかける意味については武蔵小杉の不動産会社の選び方で整理しています。
もうひとつ、基準にした事例そのものについても言えることがあります。覚えていたのは「高く売れた1件」でした。高い価格で決まった取引は記憶に残りやすく、値付けの基準として選ばれやすいものです。同じ建物の中でも、それより低い価格で決まった取引があったかもしれませんが、当時はそこまで調べていませんでした。
売れなかったことは、当時は失敗だった
結局、前向きな返事をくれた買主候補との話も、住宅ローンの審査が通らず契約直前で流れました。空室のまま売り出してから半年以上、個人の買主は決まらないままでした(内覧準備の詳細はマンション売却の内覧準備に、この期間になぜ売れなかったのかを原因ごとに切り分けた話は武蔵小杉 中古マンションが売れないにまとめています)。ローン審査落ちをきっかけに賃貸の募集も並行して始め、思いのほか早く入居者が決まったため、売却は一旦取り下げることになりました。
当時は、はっきり失敗だと思いました。売却代金を住み替え資金にあてる前提で動いていたのに、その前提が崩れたからです。空室のまま半年以上、家賃も入らず管理費と修繕積立金だけが出ていく状態が続いたのも、決して気持ちのいいものではありませんでした。結果として、手元の資金でマンションの残債を一括返済し、都内の戸建ては新たに住宅ローンを組んで購入しました。住み替え自体は実現できましたが、当初考えていた形ではありませんでした。残債を抱えたまま売り出した経緯は住宅ローン残債ありのマンション売却に詳しく書いています。
数年後、たまたま助けられた形になった
売れなかったこと自体は、当時の失敗のままです。ただ、そのまま賃貸に出して持ち続けたことが、数年経ってみると結果的に助けになりました。先を読んでいたわけではなく、売れなかったからそうなっただけの話です。
ひとつは価格です。今回改めて調べたところ、購入時を上回る水準で売り出せています。もうひとつは、賃貸に出していた間の家賃収入です。どちらも、あのとき売れていたら手元には残っていません。
それでも「上がったから売る」ではなかった
価格が上がったこと、家賃収入が積み上がったことは事実です。ですが「上がったから売る」という理由で今回の売却を決めたわけではありません。1回目は、まさに「上がったから高く売れるはずだ」と考えて価格を決め、市場に否定されています。
増えてきたもの(価格・家賃収入)がある一方で、これから減っていくものもあります。築年数が進むほど買える層は狭くなり、大規模修繕や設備更新の負担も増えていく可能性があります。上がり続けるなら持ち続ければいいだけの話です。売却を決めたのは、増えるものと減るものがちょうど交差する地点に来たと感じたからでした。

これは私の物件固有の事情に基づく判断であり、「築古のマンションは今すぐ売るべきだ」という一般論ではありません。同じ築年数でも、修繕状況やエリアの需要によって交差する位置は変わるはずです。
期限がなかったことが、そこまで届いた条件だった
ただし、この地点まで判断を持ち越せたのは、期限に追われない状態にあったからです。締切のある売主は、買主が現れなければ値下げする側に回らざるを得ません。1回目の私がまさにそうでした。逆に2回目は、いつまでに売らなければならないという事情がありません。急ぐ必要がなかったこと自体が売る理由になったのではなく、急がずに済んだからこそ、増えるものと減るものを見比べるところまで判断を延ばせた、という順番です。
小杉恵のひとこと
「急がずに済んで良かった」と言うと、待つこと自体が正解だったように聞こえるかもしれませんが、そうではないと思っています。たまたま資金計画に期限がなかっただけで、期限を抱えていた1回目の自分が判断を誤っていたわけでもありません。自分に締切があるかどうかは、増えるものと減るものを見たあとに必ず確認しておく。ここを飛ばすと、せっかく整理した判断が価格で崩れてしまいます。
| 1回目(住み替え時) | 2回目(現在) | |
|---|---|---|
| 立場 | 住み替え | 資産の入れ替え |
| 売る理由 | 都内の戸建てを買う資金 | 築古になり規模を大きくしたい |
| 期限 | あった | ない |
| 価格 | 強気で開始 → 6〜7%値下げ | 相場相当・端数までしか下げない |
| 値付けの起点 | 数年前の1件の成約事例 | 同じ建物の複数の取引実績 |
| 値上がりの扱い | 事例に上乗せする根拠にした | 上乗せせず相場相当から出発 |
| 収入 | なし(空室のまま売り出し) | 家賃収入あり |
2回目は、建物の取引実績から値付けした
1回目は1件の成約事例に自分の評価を上乗せして値付けし、市場に否定される形で修正しました。2回目は当時から付き合いのある地元の仲介会社の見立て、独自に行った相場調査、そして同じマンションの別の部屋の過去の取引実績を調べてもらった結果。この3つを突き合わせて、相場相当の価格から出発しました。
今回は入居者がいる状態のまま、オーナーチェンジ物件として売却する道を選びました。期限を設けず、端数までしか交渉に応じないと決めて出しています。1回目のように締切に追われて値下げする側に回るのではなく、こちらの基準を保ったまま買主を探す、という姿勢です。
次に売るとき、私が確認すること
今なら、売り時をこの順番で見ると思います。
- 持ち続けて増えるものが、まだ残っているか
- これから減っていくものは何か
- 売却代金の使い道に、期限があるかどうか
- 急ぐ事情があるなら、それは価格に跳ね返ると覚悟しておく
- 相場は、同じ建物・同じ条件のものと比べる
ここまでは投資用物件を入れ替える立場からの話ですが、自宅を売る場合でも①②の考え方は使えると思います。自宅であれば「増えるもの」は住み続けることで得られる暮らしの価値、「減るもの」は同じく築年数や設備の古さです。増える価値と減っていく価値のどちらが自分にとって重いか。そこが出発点になるのではないかと思います。
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よくある質問
Q. いま武蔵小杉は売り時ですか?
A. 一律には言えません。武蔵小杉は再開発の進行という地域固有の要因を抱えており、相場の動き方は棟や築年数によっても差があります。「今が売り時」と断定するより、自分の物件で増えるものと減るものを整理してから判断されることをおすすめします。
Q. 売れないとき、賃貸に切り替えるべきですか?
A. 検討する価値はあると思います。私の場合は1回目の売却が決まらなかったときに賃貸へ切り替え、結果として家賃収入が入り、価格水準も当時より上がりました。ただし賃貸への切り替えには入居者募集や契約形態の検討が必要で、買主層も変わります。すぐに現金化したい場合は買取という選択肢もあります。入居者がいる状態で売る場合の注意点はオーナーチェンジ物件の売却相場にまとめています。
Q. 築30年を超えるマンションでも売れますか?
A. 築年数だけで売れなくなるわけではありません。築年数が進むほど買える層は狭くなっていく傾向はありますが、それは価格の付け方や訴求のしかたで対応できる部分でもあります。築年数別の相場傾向は武蔵小杉のマンション相場を最新データで解説にまとめています。
Q. 値下げは、どこまでが妥当な見極めですか?
A. 1回目のときは6〜7%値下げした時点で内覧が増え、そこが市場の反応の分かれ目でした。2回目は最初から同じ建物の取引実績と地元仲介の見立てをもとに値付けしているため、大きな値下げは想定していません。1件の事例を起点に上乗せしていくより、複数の実績で挟んだ価格から始めるほうが、結果的に納得のいく交渉になると感じています。
まとめ
1回目は住み替え資金のために売り出し、同じ建物で高く売れた1件を基準に、階数・市場の上昇・立地と眺望を次々と上乗せしていきました。売れずに賃貸へ回った結果、数年後に価格と家賃収入という形で助けられ、2回目は「上がったから売る」ではなく、増えるものと減るものが交差する地点として売却を選んでいます。
ただし、ここまで判断を持ち越せたのは、期限に追われない状態にあったからです。締切のある売主は値下げする側に回りやすく、1回目の私はまさにそうでした。自分の物件を考えるときも、値上がりしたかどうかだけでなく、これから何が増えて何が減っていくのかを整理してみてください。売却全体の流れは武蔵小杉でマンションを売却する完全ガイドにまとめています。
まずは無料の一括査定で、今の物件がどのくらいの価値になるか確認してみるところから始めてみてください。

