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売却代金で住宅ローンを返す。私はそのつもりで、住宅ローンが半分ほど残ったままマンションを売りに出しました。結果として、その前提は崩れます。買主が決まらないうちに新居の引渡し日が来てしまい、最後は手元にあった資金でローンを一括返済しました。2016年に買って約7年住んだ部屋を、2023年に住み替えのため売りに出したときの話です。残債があること自体は珍しくありませんし、それで売れなくなるわけでもありません。ただ「売れた代金で返す」という段取りは、思ったほど確実ではありませんでした。

残債があっても売れる。分岐は1点だけ
住宅ローンが残っているマンションでも売却可能です。売却代金でローンを完済し、抵当権を抹消して買主へ引き渡す流れができるためです。
ただし、判断が分かれる重要なポイントが1つあります。
「売却価格 − 住宅ローン残債 − 諸費用」がプラスか、マイナスか。
プラスなら売却代金だけで完済でき、これを「アンダーローン」と呼びます。マイナスなら代金だけでは返済しきれず、不足分を自力で補う必要があります。これが「オーバーローン」です。手続きの難易度や選べる選択肢は、この一点で決まります。
諸費用には仲介手数料・印紙税・抵当権抹消費用などが含まれます。内訳は武蔵小杉のマンション売却にかかるお金全体像にまとめていますが、重要なのは「売却価格から引かれるのは残債だけではない」点です。
自分がどちらに該当するかは、残債の額が分かれば概算できます。不動産売却の手取り額シミュレーターに査定額と残債を入力すれば、手元にいくら残るか一目で確認できます。
私は残債が半分残ったまま売りに出した
売却代金でローンを返す前提だった
2023年、住み替えのため退去し、空室の状態で売り出しました。購入から約7年、住宅ローンは半分ほど残っている状態でした。
計画は「売却代金でローンを返し、手元に残った資金を住み替え費用に充てる」というごくシンプルなものでした。多くの人が考える定番の手順であり、私も他の選択肢を検討しませんでした。
完済してから売らなかったのは、手元資金を返済に使ってしまうと新居の頭金や引越し費用が足りなくなるからです。マンションを売ってその代金で返すほうが合理的だと考えていました。この判断自体は間違いではありませんが、「売り出せばすぐ売れる」という前提に依存していたのがリスクでした。
仮住まいと管理費で、出ていくお金だけが増えた
退去後は仮住まいに移りました。部屋が空室のため内覧の手配は自由になり、売却活動自体は進めやすくなりました。
しかし、お金の流れに問題が生じました。家賃収入はないのに、毎月の管理費・修繕積立金、仮住まいの家賃、既存ローンの返済という3つの支出が重なったのです。入るお金はゼロで、出るお金だけが増え続ける状態になりました。
反響が薄かったため、売り出しから約1ヶ月目に価格を6〜7%下げました。内覧は増えたものの成約には至らず、半年以上経っても買主は現れませんでした。(成約しなかった詳しい理由は武蔵小杉 中古マンションが売れないを参照)。
新居の引渡し前に、手元の資金で一括返済した
売却が決まらないまま新居の引渡し日が迫り、「売却代金で返す」という前提は崩れました。結局、私は手元資金を使って旧居の住宅ローンを一括返済しました。
振り返ると、ここが一番危険な局面でした。もし手元資金がなければ、抵当権がついた物件を抱えたまま新居の引渡しを迎えることになり、新居のローン審査や住み替え計画そのものが破綻していた可能性があります。「売れる時期を自分でコントロールできない」以上、売却代金だけに頼った計画はリスクが高すぎたと痛感しました。
その後、この部屋は賃貸に切り替えました。入居者を迎えた時点で、住宅ローンの残債はゼロになっています。賃貸へ切り替えた判断の検証は売り時は値上がりした瞬間ではなかったにまとめています。
まず自分の残債を正確に知る
売却の第一歩は正確な残債を知ることですが、正確な金額を把握している人は意外と多くありません。「毎月の返済額」は覚えていても、「あといくら残っているか」があやふやなまま相談に行ってしまいがちです。
残債は以下の方法で確認できます。
- 借入時に受け取った「返済予定表」
- 金融機関が発行する「残高証明書」
- インターネットバンキングの残高照会
ただし、書類名や発行にかかる時間は金融機関によって異なるため、直接借入先に問い合わせるのが確実です。
注意したいのは、「現在の残高」と「完済に必要な額」は異なる点です。一括返済には繰上返済手数料や経過利息がかかる場合があり、これを考慮しないと決済当日にズレが生じることがあります。
売り出し価格を決める前に借入先へ相談し、完済に必要な正確な額を調べておきましょう。
残債の額が分かったら、次に必要なのは売却価格の目安です。
アンダーローンの場合:決済日に何が同時に起きるか
売却価格が残債を上回る「アンダーローン」なら、手続きで困ることはほぼありません。決済日にすべての手続きが同時に完了するためです。
当日は、買主から売却代金を受け取り、それを原資としてローン一括返済し、抵当権抹消の手続きが司法書士によって進められます。「返済してから抹消する」という段階を踏むのではなく、同日中に一気に処理されます。
抵当権抹消の費用(登録免許税+司法書士報酬)は1〜2万円程度が目安です。実際の費用内訳はオーナーチェンジ物件を売った費用の実額を参照してください。
オーバーローンの場合:不足分をどう埋めるか
売却価格が残債を下回る場合、不足分を埋めない限り抵当権を抹消できません。主な対処法は以下の3つです。実行可否は金融機関の判断によるため、必ず事前に相談してください。
1. 自己資金で不足分を補う
貯蓄などで不足分を補填して完済する方法です。手元資金さえ用意できれば、最もスムーズに通常売却へ移行できます。
2. 住み替えローン(買い替えローン)を検討する
新居のローンに旧居の不足分を上乗せして借りる方法です。ただし取扱金融機関が限られる上、担保評価を超える借入になるため審査は厳しくなります。また、旧居と新居の決済日を合わせる必要があるなどスケジュール上の制約も増えます。
3. 任意売却を検討する
ローン返済が困難な場合、金融機関の同意を得て売却する「任意売却」という手もあります。ただし生活再建に関わる判断になるため、専門家への相談が必要です。
どの手段を選択できるかは、残債の額だけでなく「売却手続きを始める時点で手元にどれだけ余裕があるか」で決まります。

返済が難しいと感じたら、一人で抱え込まず専門の窓口に相談するのも一つの手です。
譲渡損失が出たときの税制上の救済
オーバーローンで売却して損失(譲渡損失)が出た場合、一定の条件を満たせば「特定のマイホームの譲渡損失の損益通算及び繰越控除の特例」という節税特例が使えます。この特例は新たなマイホーム(買換資産)を取得しない場合でも使えるため、売却後に住み替えず賃貸に移るようなケースでも対象になり得ます。
この特例を使うと、売却損をその年の給与所得などと相殺(損益通算)でき、その年に控除し引ききれなかった損失は翌年以降最大3年間繰り越して控除できます。
国税庁が示している主な要件:
- 売却した年の1月1日時点で、所有期間が5年を超えていること
- 売買契約日の前日時点で、償還期間10年以上の住宅ローン残高があること
- 売却価格が住宅ローン残高を下回っていること
注意点として、通算できる損額の上限は「住宅ローン残高 − 売却価格」となります。また、親族など特別の関係にある人への売却や、賃貸用の投資用物件には適用できません。なお、合計所得金額が3,000万円を超える年については、繰越控除だけが使えません(その年の損益通算には所得の制限はありません)。
特例には適用期限もあるため、実際に利用する際は必ず税理士や税務署へ確認してください。
残債ありで失敗しやすい順序
失敗を防ぐために、避けるべき順序を整理しました。
残債を把握しないまま売り出す
残債がわからないと価格設定の根拠が作れず、値下げ交渉に応じるべきかの判断もできません。査定を受ける前に、まずは残債の確認が先決です。
返済が滞ってから動き始める
返済が苦しくなってからでは選択肢が狭まります。滞納前であれば返済条件の変更や通常売却の相談に乗ってもらいやすいため、早めに金融機関へ相談しましょう。
完済後に抵当権の抹消登記を放置する
ローンを完済しても、抵当権抹消登記は自動で行われません。放置すると登記簿上に抵当権が残り続け、次の売却時に慌てることになります。このときの経緯は武蔵小杉のマンション売却にかかるお金全体像に書きました。
小杉恵のひとこと
同じ部屋を2回売却しましたが、1回目は残債あり、2回目は完済済みでした。1回目は「早く決めないと返済と仮住まいの費用が重なっていく」という焦りがあり、値下げの判断もその焦りから出ていたと思います。完済していた2回目は心に余裕を持って進められました。残債の有無は、金額だけでなく「売主の精神的余裕」にも直結すると感じています。
よくある質問
Q. 住宅ローンが残っていてもマンションは売却できますか?
A. 売却できます。売却代金でローンを完済し、抵当権を抹消して買主へ引き渡すのが一般的です。売却代金で足りない場合は、不足分を自己資金等で補う必要があります。
Q. 残債はどうやって調べればいいですか?
A. 返済予定表や残高証明書、ネットバンキングで確認できます。金融機関によって確認方法が異なるため、直接問い合わせるのが確実です。あわせて一括返済手数料の有無も確認してください。
Q. 売却価格が残債を下回りそうなときは、売るのをやめるべきですか?
A. 一概には言えません。自己資金で補填できるか、住み替えローンが使えるかなどの状況によります。まずは査定額と残債の差額を出し、金融機関に相談してみてください。
Q. 売却代金でローンを返す予定ですが、間に合わないことはありますか?
A. あります。私も半年以上売れず、新居の引渡しが先に訪れたため手元資金で返済しました。売れる時期はコントロールできないため、「売れなかった場合の代替案」をあらかじめ用意しておくことが重要です。
まとめ
住宅ローンが残っていてもマンションは売れます。ポイントは「売却価格 − 残債 − 諸費用」がプラスになるかマイナスになるかという一点です。
手順としては、まず残債を正確に確認し、そのうえで査定で価格を把握します。順番が逆になると、査定額を見ても自分にとって良い数字なのか判断できません。この2つの数字が揃えば、手元に残る資金を概算できます。
「売れたお金で返せばいい」という一本足打法の計画はリスクを伴います。売り出す前に「もし予定通り売れなかったらどうするか」まで決めてから動き出しましょう。

