査定額と成約価格のズレ|2件の実データで検証した

査定額と売却価格が釣り合っているイメージ 査定
小杉恵

小杉 恵(現役大家・宅建試験合格者)
武蔵小杉・川崎市・東京都内で実際に不動産の売買・賃貸経営をしながら、実体験に基づいた情報を発信しています。

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査定額と実際の売却価格は、ズレるものだと思われがちです。ですが、自分の売却記録を振り返っても、査定額を疑う理由は見つかりませんでした。査定額は「この価格で売れる」という保証ではなく、あくまで売れそうな価格の幅を示すものです。その幅の中にいても売れないことはありますし、幅の中で成約することもあります。私の場合にズレていたのは査定額ではなく、その幅に対して自分が抱いていた期待値のほうでした。以下の金額は実際の数字そのままではなく、かなり近い価格帯のモデル値に置き換えています。金額の大小関係や差の構造を正確に示すことを優先し、絶対額は伏せています。

査定額と売却価格が釣り合っているイメージ

3社の査定額と、私が置いた価格

まず、マンションを1回目に売りに出したときの数字から見ていきます。同一物件・同一時期に大手3社へ査定を依頼し、提示された結果と、そのあと私が実際に置いた価格を並べたのが次の表です。

項目 モデル値
査定を依頼した会社数 大手3社
査定レンジ 5,600万〜6,000万円
3社が示した適正価格 5,780万円
1回目の売り出し価格 5,980万円
値下げ後の価格 5,600万円(▲380万円・6.4%)
1回目の結果 成約せず(取り下げ→賃貸へ)
2回目の売り出し価格 5,800万円
2回目の成約価格 5,700万円(98.3%・▲100万円)

1回目の売り出しは査定レンジ(5,600万〜6,000万円)の上のほうに、値下げ後はレンジの下限に位置していました。2回目の成約価格は、売り出し価格の98.3%です。査定額が示すレンジの中で最後まで動いていたことになります。この先は、表の中身を一つずつ見ていきます。

査定レンジの中で価格が動いた位置を示すイメージ

高値査定に釣られたわけではなかった

1回目の売り出し価格5,980万円は、3社の査定レンジの上限6,000万円の近くです。「一番高い査定額に飛びついたのでは」と思われるかもしれませんが、それは違います。5,980万円は、3社が示した適正価格5,780万円に200万円を足した金額です。高値査定をそのまま信じたのではなく、レンジの内側であえて強気な価格にしました。会社選びの段階では査定額の高さも決め手のひとつにしていて、その反省は不動産会社の選び方で私が間違えたことにまとめています。ここで見ているのは、選んだ会社のもとで価格をどこに置いたかです。

小杉恵のひとこと
5,980万円という価格に、迷いがなかったわけではありません。それでも踏み切れたのは、査定額そのものより、担当してくれた方への信頼が大きかったからです。この金額でも、この人になら売ってもらえそうだと感じていました。

値下げしても、査定レンジの外には出ていなかった

1回目は反響が鈍く、途中で値下げしました。下げ幅は380万円、率にすると6.4%です。値下げ後の価格は5,600万円で、これは3社の査定レンジの下限とほぼ同じ金額でした。

それでも、1回目は個人の買主が決まらないまま終わりました。査定レンジに収まっていても、それだけで売れるとは限りません。値下げに至るまでの期間や内覧の経過、断られた理由は武蔵小杉 中古マンションが売れないにまとめています。ここでは、値下げ率を査定レンジとの距離として見ています。

2回目は査定書を取らなかった

1回目が成約に至らないまま賃貸へ回った後、数年を経て2回目の売却に踏み切りました。1回目でなぜ強気の価格をつけたのか、2回目にどう考え方を変えたのか、その判断の経緯は売り時は値上がりした瞬間ではなかったにまとめています。今回は査定書を取らず、地元の仲介会社の見立てと自分の相場調査、同じ建物の過去の取引実績をもとに、市場の適正価格として5,800万円に設定しました。地元仲介もこの金額に賛同していました。

2回目の売り出し価格5,800万円は、1回目に3社が示した適正価格5,780万円に近い数字です。「最初からこの価格にしていれば決まっていたのでは」と思うかもしれませんが、それは確かめようがありません。同じ物件・同じ市場でもう一度売ってみない限り、値付けを変えた結果は分からないからです。

もうひとつ、2回目の売り出し価格(5,800万円)は、1回目(5,980万円)より低くなっています。この間には3つの条件変化がありました。数年分の市場の値上がり(プラス方向)、築年数の進行(マイナス方向)、そして査定の前提を実需向けからオーナーチェンジ物件(入居者がいる状態のまま売る物件)に切り替えたことです。オーナーチェンジ物件は収益還元法で査定されるため、実需物件より1割程度低く出る傾向があります(詳しくはオーナーチェンジ物件の売却相場で解説しています)。値上がりと築年数の進行はほぼ相殺し、オーナーチェンジ化がマイナスに働いた結果、1回目に近い5,800万円に落ち着いたのだと思います。「最初から適正価格にしていれば」という単純な話ではありません。

成約は売り出し価格の98.3%だった

2回目の売り出し価格5,800万円に対し、成約価格は5,700万円でした。売り出し価格の98.3%、下げ幅は100万円です。値引き交渉は端数までと決めており、1回目の値下げ(6.4%)と比べるとかなり小さな交渉幅でした。この成約に至るまでには、一度指値を断った交渉がありました。詳しい経緯はマンション売却の体験談に書いています。

決済当日の精算表(仲介手数料や登記費用の実額内訳)はオーナーチェンジ物件を売った費用の実額にまとめています。費用・税金の話は本記事のテーマから外れるため、そちらに譲ります。

自分の査定レンジをまず把握する

査定を取って、売らなかった話

もう1件、査定だけ取って売却しなかった自宅の戸建てがあります。最近、1社だけに訪問査定を依頼しました。

マンションは同じ建物の成約事例を参考にできましたが、戸建てのときは「今の市況なら値上がりしているはず」という漠然とした感覚が起点でした。

結果は、思ったほど高額ではありませんでした。査定額が不当に低かったとは思っていません。大幅な値上がりはしていなかったので、私の期待値のほうが膨らんでいたのだと思います。

小杉恵のひとこと
そもそも、この査定は売るために依頼したものではありません。万が一お金が必要になったとき、いくらになるか知っておきたかったです。売却を考えていなくても、資産の現在地を知るために査定を使うこともできると思います。

ズレていたのは査定額ではなく、私の期待値だった

マンションと戸建て、2件の経験を振り返っても、査定額そのものを疑う理由は見つかりませんでした。1回目は成約しておらず、2回目は条件が変わったあとの売却なので、査定額が正しかったと証明できたわけではありません。それでも、疑う根拠は見つかりませんでした。ズレていたのは、査定額を受け取る前に自分の中で作っていた期待値のほうでした。

この期待値には2つの出所があります。ひとつは「物件固有の評価」、同じ建物の成約事例のような具体的な根拠です。もうひとつは「市況の印象」、「値上がりしているはずだ」という漠然とした感覚です。マンションは物件固有の評価から、戸建ては市況の印象から、それぞれ期待値を膨らませていました。

根拠のある評価と漠然とした印象の対比イメージ

査定額を受け取ったあと、私が確認すること

査定額を受け取ったあと、私が確認していることを整理します。

  • 提示された金額の根拠を確認する:どの事例を参照したか、収益還元法ならどんな利回りが前提か
  • 自分の期待値の出所を振り返る:物件固有の評価か、市況の印象か
  • 査定レンジのどこに売り出すか、根拠を持って決める:上限近くなら値下げも想定しておく。手取り額の目安は不動産売却の手取り額シミュレーターで確認できる
  • 1社の金額を鵜呑みにせず、複数社で根拠を比較する:金額だけでなく根拠の説明が具体的かどうかで会社を見る
  • 公開データで成約価格の水準を自分でも確認する:国土交通省の不動産情報ライブラリを使えば、査定額の妥当性を第三者データで確認できる。戸建ての場合の具体的な手順は武蔵小杉の一戸建て 売却で解説している

よくある質問

Q. 査定額と成約価格は、平均するとどれくらいズレるものですか?

A. 一律には言えません。私の場合、1回目は査定レンジの下限まで下がり(▲6.4%)、2回目は売り出し価格の98.3%で成約しました。これは2件のサンプルであり、エリアや時期によって変わります。

Q. 最高査定額で売り出すのはアリですか?

A. 私は査定レンジの上限ではなく、そのすぐ下で売り出しました。上限近くで売り出すこと自体は問題ありませんが、反響が鈍ければ値下げを想定しておく必要があります。

Q. 査定書は必ず取るべきですか?

A. 私自身、2回目は査定書を取りませんでした。地元仲介会社の見立てと自分の相場調査、同じ建物の取引実績から価格を決めています。金額の根拠を複数の情報源で持っておくことが大事だと思います。

Q. 売る予定がなくても査定を頼んでいいですか?

A. 机上査定は気軽に依頼して構いませんが、訪問査定は本来、売却を検討している段階で依頼するものです。私も戸建ての訪問査定は「万が一のときのため」でしたが、依頼する際はその時点での検討状況を正直に伝えるのがよいと思います。

Q. 査定額が想定より低かったときはどうすればいいですか?

A. 自分の期待値がどこから来ていたかを振り返ってみてください。具体的な成約事例に基づく評価だったのか、漠然とした市況の印象だったのか。後者なら、査定額のほうが実態に近い可能性があります。複数社に依頼して根拠を比較するのも有効です。

まとめ

2件の経験から、査定額を疑う理由は見つかりませんでした。ズレていたのは、査定額に対する自分の期待値のほうでした。その出所は、物件固有の評価だったり、漠然とした市況の印象だったりします。

ただし、これは私の2件の経験に基づく話です。エリアや時期、物件の種類によって事情は変わります。まずはご自身の物件で査定を受け、提示された金額と自分の期待値を見比べてみてください。

まずは複数社の査定を受けて、ご自身の物件の査定レンジを把握するところから始めてみませんか。

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この記事を書いた人
小杉恵

現役大家(宅建試験合格者)。武蔵小杉・川崎市・東京都内で投資用不動産(新築アパート・中古マンション・戸建)を自ら運用しながら、実体験に基づいた「分かりやすく正直な」不動産売却情報を発信しています。

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