一括査定と買取の使い分け|私が一括査定を使わなかった理由

不動産売却の査定書・電卓・鍵を並べたフラットレイ写真 不動産売却ガイド
小杉恵

小杉 恵(現役大家・宅建試験合格者)
武蔵小杉・川崎市・東京都内で実際に不動産の売買・賃貸経営をしながら、実体験に基づいた情報を発信しています。

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複数の不動産会社に一度に査定を依頼できる「一括査定」。存在自体は知っていましたが、自分のマンションを売却した際は、そもそも選択肢として検討しませんでした。なぜ検討しなかったのか、代わりに何をしたのか、そしてその結果どうなったのかを、実際の流れに沿ってお伝えします。

不動産売却の査定書・電卓・鍵を並べたフラットレイ写真

買取価格の差は「速さ」の対価

一括査定を使うか、自分で個別に依頼するか、それとも買取を選ぶか。この3つのどれが正解かは、物件の条件だけでは決まりません。判断の軸になるのは、次の2点だと考えています。

①提示された金額と、自分が納得できる金額にどれくらいの差があるか
②その差額を、売却時期を「待つ」ことで埋められる状況にあるか

買取価格が仲介より安くなるのは、業者が不当に利益を得ているからではありません。「確実に、早く、内覧対応なしで売れる」ことの対価だからです。その「速さ」に対して差額分の価値を感じられるかどうかで、買取を選ぶべきかが決まります。私の場合はこの差額が大きすぎ、かつ売却時期を待てる状況だったため、「待つ(仲介)」を選びました。以降は、そもそも一括査定を使わなかった理由から詳しくお話しします。

3つの選択肢を比較する

一括査定・個別依頼・買取は、それぞれ価格・期間・手間・営業電話の量が異なります。まずは全体像を整理してみましょう。

一括査定 個別依頼 買取
価格 比較しやすい 依頼先次第 仲介より低め
対応の早さ 数日以内に一斉連絡 比較に時間がかかる 数日〜数週間
手間 入力1回、対応は複数社分 自分で探して調整 内覧対応ほぼ不要
営業電話 社数分、時期が集中 声をかけた分のみ 基本1社で完結

一括査定と個別依頼は、どちらも「仲介」という枠組みの中での話であり、違いは比較対象の集め方だけです。一方で買取だけは、売却の仕組みそのものが異なります。

一括査定・個別依頼・買取の3つの売却方法を比較したインフォグラフィック

なお、私は現役大家として複数の物件を保有・運用していますが、この記事で書く一括査定・個別依頼の比較は、自宅マンション1件を売却したときの実体験に基づいています。それでは、私がなぜ一括査定ではなく個別依頼を選んだのかから書いていきます。

なぜ一括査定を使わなかったのか

一番の理由は、依頼先を探す段階をスキップできる「既存の接点」がすでにあったからです。一括査定という選択肢を検討する以前に、連絡すべき会社が1社決まっていました。

もうひとつの理由は、当時の「なるべく高く売りたい」という気持ちの強さです。多数の会社に一斉に依頼して条件を比べるやり方が、自分の感覚に合いませんでした。「この物件をきちんと理解してくれる担当者に、丁寧に対応してほしい」という思いの方が勝っていたのだと思います。

営業電話が増える不安や、個人情報を複数社に渡す懸念を理由に挙げる方もいますが、正直なところ当時の私はそこまで深く考えていませんでした。

一括査定を使わずに3社を比較した方法

最初のきっかけは、住み替え先を探していた時期に内見した武蔵小杉の戸建てでした。そのとき対応してくれた担当者の名刺を、特に理由もなく保管していたのです。売却を検討し始めたタイミングでその名刺を頼りに連絡してみたところ、マンション売却に詳しい別の担当者を紹介してもらえました。

残りの2社は、「武蔵小杉 売却」で検索して上位に表示された大手仲介会社へWebサイトから直接依頼しました。3社ほぼ同時に依頼し、スケジュールの都合もあって1つの週末にまとめて査定対応を行いました。

ここで誤解のないように言っておくと、名刺をきっかけに連絡した会社が最初から本命だったわけではありません。窓口になった担当者と、実際に売却を任せた担当者も別人です。3社のうちどこに任せるかは、査定額の高さ・担当者の熱意や自信・地域知識という基準のもと、フラットに比較して決めました。この基準の詳細は不動産会社の選び方で私が間違えたことに書いた通りです。

なお、3社に声をかける前に「マンションナビ」や「マンションレビュー」で自分でも相場を確認していました。ただし、これは相場ページを閲覧しただけで、一括査定フォームからの送信はしていません。相場の調べ方自体は武蔵小杉のマンション相場を最新データで解説でも詳しく解説しています。

それでも、個人の買主には売れなかった

3社の中から1社を選んで専任媒介契約で売り出しましたが、最終的に個人の買主には売れませんでした。専任期間の満了後は一般媒介契約に切り替えて地元の仲介会社を追加し、その後この物件を「賃貸」に切り替える判断をしました。経緯の詳細は不動産会社の選び方で私が間違えたことにまとめています。

これは一括査定を使わなかったことが原因ではありません。3社を比較して選んだ会社自体には何の不満もありませんでした。売れなかった一番の理由は、不動産会社から提示された査定額と自分の希望額に開きがあり、その差を埋めるために希望価格を下げる判断をしなかったことです。仮に一括査定を使っていたとしても、希望額を下げない限り結果は同じだったと今は思っています。

買取の提示額を見て考えたこと

個人向けの売却と並行して、買取という選択肢も視野に入れていました。実際、仲介会社経由で複数の買取業者から価格の提示を受けたこともあります。詳しい経緯は武蔵小杉のマンション買取で書いています。

提示された金額は、売り出し価格のおよそ7〜8割程度でした。金額の具体的な数値は伏せますが、仲介での想定額より低く、業者ごとの差も目立ちました。今回は仲介会社を経由した提示だったため仲介手数料も発生し、それを差し引くと、目標としていた手取り額には届きませんでした。

手取りベースで見ても、差はどこまで縮まるか

買取は不動産会社自体が買主となる取引です。業者に直接買い取ってもらう場合は仲介手数料が発生しないため、「売却価格ほどの差は手取り額には出ない」というのが一般的です。

ただし、私のケースにはこの一般論が当てはまりません。前章で触れた通り、仲介会社を経由した提示だったことが前提にあるためです。

そもそも、仲介手数料は簡易計算で物件価格の約3%(+消費税)程度です(詳しい計算方法は武蔵小杉のマンション売却にかかるお金の全体像で解説しています)。先述の通り価格差自体が2〜3割ある場合、仲介手数料をゼロにできたとしても、その価格差を埋めきることはできません。手取りベースで比較しても買取が仲介を上回るケースは考えにくく、縮まるのはあくまで差額の一部です。

とはいえ、表面上の価格だけでなく手取り額で比較した方が、より現実的な判断ができます。ご自身の物件で試算してみたい方は、不動産売却の手取り額シミュレーターに提示額を入力して比較してみることをおすすめします。

待てる人と待てない人の差

「売却時期を待てる状況」にあったからこそ、その判断ができました。賃貸に回した方が収益化できると判断できたこと、そして最悪売れなくても将来的に自分で住むという選択肢が残っていたことが大きいです。

小杉恵のひとこと
賃貸に切り替えてからの運用は、想像以上にスムーズでした。駅から近い立地のおかげか入居者の退去リスクが低く、家賃収入は安定していました。室内の設備も状態が良かったため、修繕依頼や問い合わせもほとんどなく、管理の手間はほとんどかかりませんでした。

一括査定が向く人・向かない人

ここまで読むと「一括査定を批判している」ように聞こえるかもしれませんが、決してそうではありません。一括査定には構造的なデメリットがある一方で、多くの人にとって非常に有効な選択肢でもあります。

一括査定の弱点は、「会社は選べても、担当者まで選ぶことはできない」点です。既存の接点があれば「この物件種別に詳しい人を指名したい」と個別にリクエストできますが、これは個別依頼だからこそできることで、一括査定の仕組み上の課題とも言えます。

逆に言えば、そうした不動産会社との接点が一切ない人や、地域の土地勘がない人にとって、一括査定は探す手間を大幅に削減できる優れたツールです。「知り合いだから任せる」のではなく、「入口の作り方」と「実際の委託先の選定」は分けて考えるのがコツです。査定額の妥当性の見極め方や、会社ごとに査定額が異なる理由については武蔵小杉の不動産査定はどこがいい?で解説しています。

一括査定でまず入口を作ってみる

よくある質問

Q. 複数の会社に同時に査定依頼してもいいですか?

A. 個別依頼・一括査定にかかわらず、複数社へ同時に相談すること自体は全く問題ありません。私自身も3社にほぼ同時に依頼し、週末の1日でまとめて対応しました。同時に動くことで、査定額や担当者の対応力・相性を横並びで比較できるメリットがあります。

Q. 営業電話を減らす方法はありますか?

A. 一括査定は依頼した社数分の連絡が入るため、「依頼数を3社程度に絞る」「連絡可能な時間帯や連絡手段(メール希望など)を備考欄に記載する」といった工夫が有効です。個別依頼の場合は相談した社数のみで完結するため、連絡の量を自分で完全にコントロールできるメリットがあります。

Q. 相場サイトを見るだけで、一括査定を使わなくても大丈夫ですか?

A. 相場サイトは大まかな価格帯を把握するのには役立ちます。私自身も「マンションナビ」や「マンションレビュー」で事前に相場を確認しました。ただし、これらはあくまで市場の目安であり、実際の査定額は日当たり・階数・室内の状態などの個別要因で変動します。相場感を掴んだうえで、実際の査定をどう依頼するかは別に考える必要があります。

Q. 一括査定を使わなかったことを後悔していますか?

A. 後悔はありません。依頼先を探す手間を最小限に抑えられたため、当時の私の状況には適した選択だったと思っています。ただし、それは「たまたま以前の接点があった」という個人的な条件に恵まれていたからであり、全員に当てはまる方法ではありません。

まとめ

私が一括査定を使わなかった理由は、「依頼先を探す手間を省ける接点がすでにあること」と「一斉依頼のスタイルが性格的に合わなかったこと」の2点でした。しかし、最終的に個人の買主に売却できなかったことと、一括査定を使わなかったことに関連性はありません。買取の提示額を見ても、手取り額ベースで比較した際の仲介との差は明確でした。

すでに信頼できる接点がある方は、その窓口を活用しつつも依頼先の選定は客観的に行うことをおすすめします。一方、そうした接点がない方や土地勘のないエリアでの売却を検討している方は、まずは一括査定を利用して複数社の査定額や対応を比較することから始めてみてください。

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この記事を書いた人
小杉恵

現役大家(宅建試験合格者)。武蔵小杉・川崎市・東京都内で投資用不動産(新築アパート・中古マンション・戸建)を自ら運用しながら、実体験に基づいた「分かりやすく正直な」不動産売却情報を発信しています。

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