元住吉のマンション売却|武蔵小杉の相場は使えない

元住吉のマンション売却をイメージした木製の建物模型 相場・価格データ
小杉恵

小杉 恵(現役大家・宅建試験合格者)
武蔵小杉・川崎市・東京都内で実際に不動産の売買・賃貸経営をしながら、実体験に基づいた情報を発信しています。

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元住吉のマンションを売ろうとして相場を調べると、たいてい先に隣の武蔵小杉の数字が出てきます。同じ川崎市中原区、同じ東急東横線、隣の駅。参考にしてよさそうに見えます。

ところが成約データを駅ごとに割ると、両者の水準ははっきり違います。かといって「中原区の相場」を持ってきても、その数字は半分以上が武蔵小杉でできています。元住吉の売主にとっては、どちらも自分の数字ではありません。

この記事では、国土交通省が公開している成約価格データから元住吉の分だけを取り出します。武蔵小杉と比べるのは、両者の差がどれだけあるかを示すためです。

元住吉のマンション売却をイメージした木製の建物模型

中原区の相場は半分が武蔵小杉

この記事で用いるのは、国土交通省の「不動産情報ライブラリ」で公開されている成約価格データです。レインズ(不動産流通標準情報システム)に蓄積された実際の取引情報を国が匿名化して公開しているもので、誰でも無料で閲覧できます。対象データは、川崎市中原区内の中古マンションで、2024年第1四半期から2026年第1四半期までに成約した1,149件です。そのうち、元住吉駅を最寄りとする物件は148件あります。

売り出し中の物件がポータルサイトに出している掲載価格とは別物です。掲載価格のほうが高く出るのが普通なので、混ぜて考えると値付けを見誤ります。

区分 件数 中央値 70m²なら よくある価格帯
元住吉 148 85.3 約6,000万円 66.6〜107.6
武蔵小杉 604 133.8 約9,400万円 105.3〜157.1
中原区全体 1,149 102.7 約7,200万円 74.7〜137.5
中原区(武蔵小杉を除く) 545 77.1 約5,400万円 58.8〜96.0

※単位:万円/m²。「70m²なら」は中央値に70を掛けた金額で、同じ数字を単位のみ変換して示しています。元住吉・武蔵小杉ともに成約住戸の面積の中央値が70.0m²であるため、70m²は実際の取引における標準的な広さといえます。所有物件の広さに当てはめたい場合は、m²単価の中央値にその面積を掛けて試算してください。「よくある価格帯」は、m²単価を安い順に並べた際に中央の半分(全体の50%)が収まる範囲です。

元住吉の85.3万円/m²に対して、武蔵小杉は133.8万円/m²で、1.57倍の開きがあります。70m²換算に直すと約6,000万円と約9,400万円となり、3,000万円以上の差が生じています。

ここで注目してほしいのは、表の下2行です。中原区全体の中央値は102.7万円/m²で、元住吉の85.3万円/m²はそこから17%低い水準にあります。区全体の取引1,149件のうち604件(全体の52.6%)が武蔵小杉駅を最寄りとする物件だからです。区内の取引の過半数が1つの駅に集中していて、その駅の相場が区内で最も高い。「中原区の相場」を目安にすると、武蔵小杉のぶんだけ高い数字を見ることになります。

では、武蔵小杉を除外したデータを見ればよいかというと、そう単純ではありません。武蔵小杉の604件を除いて再集計すると、中原区の中央値は77.1万円/m²まで下がります。今度は元住吉のほうが11%高い数値になります。この数値には、武蔵中原や平間といった、元住吉よりも相場水準が低いエリアが含まれているためです。

売主が代わりに使いがちな数字は、上にも下にもズレる。区の数字を上からも下からも借りられないので、元住吉という駅単体の数字を見るしかありません。

区の単位で川崎市全体を俯瞰した内容は川崎市のマンション売却で扱っています。7区の間で最大2.36倍の差があり、区の中央値だけでは足りないという話をしています。この記事はその続きで、区をさらに駅で割ったものです。同じ中原区では新丸子のマンション売却も駅単位で見ていますが、そちらは売られている住戸の広さが元住吉とは大きく違うという話になります。

元住吉の中でも、価格は一枚岩ではない

元住吉の成約を築年数で4つに分けたのが次の表です。単身向けの狭い住戸を除いた130件が対象です。

築年帯 件数 中央値 成約した住戸の面積の中央値 70m²なら よくある価格帯
築10年以内 33 113.3 70.0m² 約7,900万円 110.7〜124.3
築11〜20年 30 100.0 80.0m² 約7,000万円 81.4〜108.4
築21〜30年 45 85.0 75.0m² 約6,000万円 76.0〜90.0
築31年以上 22 60.6 60.0m² 約4,200万円 50.2〜71.1

※単位:万円/m²(築年数は2026年時点)。築31年以上をひとまとめにしたのは、これ以上細かく分けると1つの区分が数件になり、数字が安定しなくなるためです。また、この表は30m²以上の住戸に限って集計しています(理由は次の項目で説明します)。

上から下まで1.87倍。70m²換算では、築10年以内の約7,900万円に対して築31年以上は約4,200万円で、3,700万円の差があります。自分の物件がどの行にあたるかを、ここで確かめてください。

気をつけたいのは、真ん中の2つの行です。築11〜20年の「よくある価格帯」は81.4から108.4万円/m²まで開いていて、築21〜30年の帯(76.0〜90.0)と大きく重なっています。築年数が10年違っても、価格帯としては重なる部分がある。逆に築31年以上の帯は、他のどの帯とも重なりません。元住吉で価格が大きく変わる境目は、築30年前後にあります。

投資用ワンルームを外している

この築年帯には元々40件の成約があり、そのうち18件が30m²未満の1R・1Kでした。築33年から40年、成約総額は450万円から1,400万円で、住むためではなく投資用に売買されるタイプの住戸です。m²単価の中央値は40.8万円/m²で、同じ表に入れると築31年以上は60.6から50.4まで下がります。

ファミリー向けの部屋を売る人にとって、この50.4万円/m²は自分の数字ではありません。単身向けのワンルームなら40.8万円/m²のほうが近い。1つにまとめるとどちらにも当てはまらない数字になるため、表は前者に絞りました。

上の3つの行には30m²未満が元々1件もないので、この絞り込みによる変化はありません。駅全体の中央値も85.3から88.5万円/m²へ動くだけで、前の表の駅どうしの比較には影響しません。

元住吉の数字と自分の査定額を並べてみる

元住吉と武蔵小杉で、何が違うのか

1.57倍という価格差を生み出している要因を、データから読み解きます。街のイメージなどの定性的な要素ではなく、実際に成約した物件の構造的違いに着目します。

高額な取引の厚みが違う

m²単価が150万円を超えた取引の割合を比べると、武蔵小杉は604件のうち31.0%、元住吉は148件のうち1.4%でした。武蔵小杉では3件に1件が150万円/m²を超えているのに対し、元住吉ではほぼ出てきません。

一方で、70m²未満の住戸が占める割合は元住吉40.5%、武蔵小杉38.7%とほぼ同じです。売れている部屋の広さの構成は似ているのに、単価の上のほうの厚みだけが大きく違う。武蔵小杉に集中しているタワーマンションの供給が、この差として表れていると考えられます。武蔵小杉側の相場の中身は武蔵小杉のマンション相場を最新データで解説で詳しく扱っています。

築年数の構成が逆になっている

成約した物件の築年数の内訳も、両駅で対照的です。武蔵小杉は築20年以内が82.7%を占めるのに対し、元住吉は築21年以上が57.4%と過半数です。武蔵小杉で売れているのは比較的新しい物件が中心で、元住吉で売れているのは築20年を超えた物件が中心、という違いがあります。

ただし、この構成の違いだけで1.57倍を説明することはできません。築年数を揃えて比べても、どの築年帯でも武蔵小杉のほうが1.1倍から1.4倍高い水準にあります。物件の新しさを揃えてもなお差が残る、というのが実態です。

築20年の差が、駅の差を打ち消すとき

ここまでは同じ条件で比べてきましたが、築年帯をずらすと関係が変わります。元住吉の築10年以内の中央値は113.3万円/m²、武蔵小杉の築21〜30年は93.1万円/m²です。元住吉の築浅の物件が、武蔵小杉の築古の物件を上回っています。築20年ぶんの差が、駅の違いを打ち消しているかたちです。

ただし、この113.3万円/m²は33件から出たもので、他の行より件数が少なめです。中身を確かめると、33件のうち20件が同じ年に建った物件の取引で、区域も駅から少し離れた一角に寄っていました。このデータには階数や方角、建物名が記録されていないため、同じマンションの別の部屋が何件も並ぶことがあります。件数だけを見て「元住吉の築浅はこの水準」と一般化するのは危険です。もっとも、その20件を除いて残り13件で計算し直しても中央値は118.6万円/m²で、93.1万円/m²を上回る関係は変わりませんでした。

この20件は、元住吉全体の集計にも効いています。除いて計算すると148件の中央値は85.3から80.0万円/m²まで下がります。中原区の数字が武蔵小杉に引かれているのと同じことが、駅の中でも起きているわけです。とはいえ、この20件も実際に成約した取引なので、除いたほうが正しいということではありません。駅まで絞り込んでも集計は集計だという前提で、最後は自分の物件を個別に見ることになります。

停車する電車の種別が違う

元住吉には東横線と目黒線が乗り入れていますが、東急電鉄の公式案内によれば、停車するのはどちらも各駅停車のみです。隣の武蔵小杉には東横線のFライナー・特急、通勤特急、急行が停まり、目黒線も急行が停車します。

これは事実として確認できることですが、この違いが価格差の何%を生んでいるかまでは、公開されているデータからは分かりません。上で見たとおり、供給されている物件の種類そのものが違うためです。停車種別だけを取り出して価格と結びつけることはしないでください。

東横線の元住吉と武蔵小杉の停車種別を比べた図

買い手が見ている範囲は、駅をまたぐ

ここまでは売る側から見た数字でしたが、買う側の視野はもう少し広く取られています。

小杉恵のひとこと
以前、自分が住む家を買おうとしていたときに、武蔵小杉・元住吉・新丸子の物件を見て回ったことがあります。このときに探していたのはマンションではなく戸建てでしたが、駅から近い物件の選択肢が思ったより少なく、条件を広げて元住吉や新丸子まで足を延ばす必要がありました。最終的に選んだのは都内の物件です。当時の印象は「価格が都内とほとんど変わらない」というものでした。

戸建てを探していたときの話なので、マンションの価格帯にそのまま当てはまるものではありません。ただ、駅を1つの単位として物件を探し始めても、条件に合うものが見つからなければ隣の駅まで範囲を広げる。この動き方は物件の種類を問わず起こります。

売る側から見ると、これは2つのことを意味します。ひとつは、元住吉の物件を検討している人が、同じ時期に武蔵小杉の物件も見ている可能性があること。もうひとつは、その逆もあることです。武蔵小杉で予算に届かなかった人が、元住吉まで下りてくる。

ただし、だからといって武蔵小杉の価格を自分の物件に当てはめてよいことにはなりません。買い手は両方を見たうえで、価格差があることも承知しています。

元住吉で売るときに、実際に何を見るか

ここまでの数字を値付けにどう使うか。最初にやることは、売り出し中の物件の掲載価格ではなく、成約した価格を見ることです。ポータルサイトに並んでいるのは「その価格で売りたい」という希望であって、その価格で売れた実績ではありません。値下げを重ねた末に成約した物件も、売れずに取り下げられた物件も、掲載価格からは見えません。

この記事で使ったデータは、不動産情報ライブラリから誰でも取得できます。検索画面の操作は武蔵小杉の一戸建て 売却で手順を追って説明しました。戸建てを例にしていますが、種類の欄で「中古マンション等」を選べば操作は同じです。地区名まで絞り込めるので、この記事の表よりさらに細かい条件で調べることもできます。

次に、自分の物件が築年帯の表のどの行に入るかを確かめます。築年数は2026年時点で数えてください。行が決まったら、中央値に自分の部屋の面積を掛けた金額が出発点になります。

そのうえで、複数社の査定額と突き合わせます。ここで数字が合わないことは珍しくありません。この記事の数字は条件の違う何十件もの取引を並べた中央値であって、自分の部屋の評価ではないからです。階数も方角も、室内の状態も、データには含まれていません。査定額と公開データがなぜズレるのかは査定額と成約価格のズレで整理しています。

公開データで自分の位置を掴んでから査定を受けると、提示された金額が高いのか安いのかを自分で判断できます。順番が逆になって、査定額を先に見てしまうと、その金額が唯一の基準になってしまいます。

まとめ

元住吉のマンションを売るときに使える数字は、元住吉の数字だけです。中原区の中央値は半分以上が武蔵小杉でできていて、元住吉はそこから17%低い位置にあります。かといって武蔵小杉を除いた中原区の数字を借りれば、今度は元住吉のほうが11%高い。どちらを持ってきても自分の位置は分かりません。

そして元住吉の中でも、築年帯によって1.87倍動きます。駅まで絞り込んだうえで、さらに自分の築年帯の行を見る。そこが出発点です。

武蔵小杉との関係については、誤解しないでほしいことがあります。同じ条件で比べれば武蔵小杉のほうが高い水準にありますが、築年帯をまたげば元住吉の築浅が武蔵小杉の築古を上回ります。「隣の駅だから安い」という受け取り方をして、必要以上に価格を引く理由にはなりません。武蔵小杉の相場を持ち込んで高く出しすぎれば売れ残り、安いと思い込んで引きすぎれば手取りが減る。どちらも同じ間違いから起きます。

武蔵小杉エリアでの売却の進め方全体は武蔵小杉でマンションを売却する完全ガイドにまとめてあります。元住吉から売却を考え始めた方にも、流れの部分はそのまま使えます。

よくある質問

Q. 元住吉のマンションは武蔵小杉より安いのですか?

A. 駅全体の中央値で比べると、武蔵小杉のほうが1.57倍高い水準にあります。築年数を揃えて比べた場合も、どの築年帯でも武蔵小杉のほうが1.1倍から1.4倍高く、この順序が入れ替わることはありませんでした。ただし築年帯をまたぐと関係は変わり、元住吉の築浅の物件が武蔵小杉の築古の物件を上回る例があります。「駅が違えば必ず安い」ではなく「同じ条件なら差がつく」と捉えるのが実態に近いはずです。

Q. 元住吉の相場はどこで調べられますか?

A. 国土交通省の不動産情報ライブラリで、成約した価格を無料で確認できます。市区町村単位で検索してCSVをダウンロードし、最寄駅の欄で元住吉を絞り込むと、この記事と同じ母集団になります。検索画面の操作手順は本文中で紹介した戸建ての記事にまとめてあります。なお条件を細かくしすぎると該当件数が減り、1件の特殊な取引で数字が動いてしまいます。この記事が1つの行に20件以上を確保しているのも同じ理由なので、20件を下回るようなら期間を延ばすか、条件をひとつ戻してください。

Q. 元住吉は各駅停車しか停まりませんが、売却に不利ですか?

A. 東横線・目黒線とも各駅停車のみの停車であることは、東急電鉄の公式案内で確認できる事実です。ただし公開されている成約データからは、停車種別が価格をどれだけ動かしているかを取り出すことはできません。武蔵小杉との価格差には、タワーマンションの供給が武蔵小杉側に集中していることや、売れている物件の築年数の構成が違うことも同時に効いています。停車種別だけを理由に値付けを下げる判断はしないほうがよいでしょう。

Q. 査定額がこの記事の数字と違うのですが、どちらが正しいのですか?

A. どちらも間違ってはいません。この記事の数字は過去2年あまりに成約した何十件もの取引を並べた中央値で、面積は5m²刻みに丸められ、階数・方角・室内の状態は記録されていません。対して査定額は、自分の部屋の個別の条件を見て出された金額です。役割が違うので一致しないのが普通です。困るのは、査定額しか手元にない状態で、その金額が妥当かどうかを判断できないことのほうです。なお武蔵小杉の相場水準で値付けをすると売り出し価格が実勢から離れ、反響が来ないまま時間だけが過ぎることがあります。この状態に陥ったときの立て直し方は武蔵小杉 中古マンションが売れないで扱っています。

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この記事を書いた人
小杉恵

現役大家(宅建試験合格者)。武蔵小杉・川崎市・東京都内で投資用不動産(新築アパート・中古マンション・戸建)を自ら運用しながら、実体験に基づいた「分かりやすく正直な」不動産売却情報を発信しています。

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