売れる部屋と売れない部屋の差|7件内見して1件を選んだ記録

7件の物件案内図から1件を選ぶイメージ 不動産売却ガイド
小杉恵

小杉 恵(現役大家・宅建試験合格者)
武蔵小杉・川崎市・東京都内で実際に不動産の売買・賃貸経営をしながら、実体験に基づいた情報を発信しています。

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自分の部屋が売れなかった話は、これまで何度か書いてきました。半年以上売りに出しても個人の買主が決まらなかった経緯は武蔵小杉 中古マンションが売れないにまとめています。ただ、そこで分かるのは「自分の部屋がなぜ選ばれなかったか」だけで、しかも仲介担当者から聞いた話に過ぎません。買主が何を基準に、他の候補と比べて見送ったのかまでは書けませんでした。今回は視点を入れ替えて、私自身が買う側に立ったときの話を書きます。落とした側の基準です。

7件の物件案内図から1件を選ぶイメージ

7件見て、6件を見送った

2016年に、住むためのマンションを買いました。そのとき実際に部屋まで行って内見したのは7件で、買ったのはそのうちの1件です(資料や現地確認の段階で見送った物件は他にあります)。

残りの6件は、すべて見送ったことになります。売主から見れば、私は6回「候補から外した人」だったことになります。当時は当然ながら深く考えていませんでした。気に入らなければ次を見る、それだけです。しかし売る側に回って初めて、あのとき自分が何を見て外していたのかを思い返すようになりました。

見送りの理由は「部屋の外」にあった

見送った物件について、当時実際に挙げた理由はこうでした。

  • 2階の部屋で、前面道路が4メートルほどしかなく、眺望がいまひとつだった
  • 駅から徒歩10分という表示だったが、実際に歩くと意外と遠く感じた
  • 価格帯が予算をオーバーしていた
  • 線路に近すぎて、音が気になった
  • 間取りが自分の好みではなかった

並べてみて気づくのは、室内の話が「間取り」しかないことです。前面道路の幅も、駅からの体感距離も、線路の音も、玄関に入る前に決まっています。予算オーバーに至っては部屋を見る前の話です。

一方で、売主が手を入れられるのは室内だけです。掃除もペンキ塗りも設備の交換も、すべてドアの内側で完結します。ここに構造的なズレがあります。売主が一番時間とお金をかける場所と、買主が見送りを決める場所が、そもそも重なっていないのです。私自身、売る側では室内を整えることに力を注いだのに、買う側では見送りの大半を室内以外の理由で決めていました。

決め手は加点、脱落は減点

では、買った1件は何がよかったのか。当時挙げた条件は、価格が予算内だったこと、部屋が広く眺望が良かったこと、内装がきれいだったこと、駅が近かったこと、日当たりが良く間取りも気に入ったことです。この部屋は、消去法で仕方なく選んだわけではありません。広さと眺望と日当たりが気に入って買いました。

ここで気づくのは、見送りの理由には室内の話がほとんどなかったのに、選んだ理由には室内の話が並んでいることです。矛盾しているようですが、起きている順番が違います。前面道路や駅からの距離や線路の音は、室内を見るより前に候補を落としていきます。広さや内装や日当たりが効いてくるのは、そこを通過して比較のテーブルに残った物件どうしの間だけです。

唯一の例外が間取りでした。間取りは室内の要素ですが、好みに合わなければその場で終わります。広さや内装のように「他と比べてどうか」を検討する前に、単独で見送りが決まる。室内にも減点として働く項目があるとすれば、私の場合はここでした。

つまり、脱落は減点で決まり、最後の1件は加点で決まっていました。売主から見ると「気に入られて選ばれた」部分だけが見えますが、その手前には、テーブルに乗る前に落ちた物件が何件かあります。私の場合、そこで落ちた物件は、室内を磨いても結果が変わらなかったはずです。一方で、テーブルまで残ったうえで最後に外れた物件もあったはずで、そちらは室内の比較で負けたことになります。加点を増やす工夫が効くのは、減点で落ちる段階を通過したあとなのだと思います。

見送りの理由と決め手を室外・室内で対比した図

買主は同価格帯を横に並べて比較している

ここが、売る側に回ってから一番実感が変わったところです。

買主は1件を単独で評価していません。予算という枠を先に決めて、その枠に入る物件を並べ、その中で比べます。私も7件を1件ずつ採点していたわけではなく、常に「今まで見た中でどうか」という見方をしていました。後から見た物件が、前に見た物件の評価を書き換えることも普通にあります。

この見方をすると、落選の意味が変わります。落ちたのは「悪い部屋だから」ではなく、「並べたときの位置づけ」が原因だったからです。同じ部屋でも、隣に並ぶ候補が変われば結果は変わります。売主にはその「並び」が見えません。見えているのは自分の部屋だけで、買主が同時に何と比べているかは、内覧の報告からは伝わってこないのです。

そして、この並びの中での位置を決めているのが価格です。売り出し価格をどこに置くかで、そもそもどの集団に並べられるかが変わります。査定額と実際の成約価格がどう動いたかは査定額と成約価格のズレに自分の記録をまとめました。

並びの中での位置は、価格そのものだけでなく「資産価値」という切り口からも確かめられます。マンションの資産価値を独自の指標で公開しているサイトがあり、自分の部屋がどう評価されるかを調べられます(利用には無料の会員登録が必要です)。

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賃貸の内見で見られる場所は人それぞれ

ここからは賃貸の話です。売買の内覧とは条件も心理も違うので、そのまま同じものとして読まないでください。

大家として入居者を募集していると、内見した方の反応が仲介会社経由で入ってきます。そこで言われたことのうち、印象に残っているものを挙げます。

  • 駅周辺の雰囲気が思っていたのと違ったようで、「その駅に住みたくない」と言われたことがある
  • 女性の入居希望者から「下駄箱が小さい」と指摘されたことがある
  • 夫婦で見に来た場合、妻側は間取りと収納を気にする傾向がある
  • 駐輪場と駐車場について聞かれることが多い

下駄箱の大きさは、私自身が買主として物件を見ていたときに一度も気にしなかった項目です。駅周辺についても、私は「駅から近いか」を主に見ていました。同じ部屋を見ても、見る人によって注目する場所は違います。だから「買主が見るポイント」を網羅してすべて潰す、という発想には無理があります。誰かにとっての減点要因は、別の誰かにとっては視界にすら入りません。

網羅できないのなら、せめて自分の部屋がどの並びに置かれるのかだけは知っておきたい。そう考えると、やることは一つに絞られます。

一度、買主として競合を見に行く

その一つが、自分が買主のふりをして競合物件を内見してみることです。

自分の部屋と同じくらいの価格帯で売りに出ている物件を、実際に見に行く。駅から歩いてみて、前面道路を見て、部屋に入る。そうすると、自分の部屋が買主の頭の中でどの位置に並ぶのかが、初めて具体的に想像できます。私が7件を横に並べていたときの感覚は、資料を眺めているだけでは絶対に再現できませんでした。歩いてみて「遠い」と感じるかどうかは、地図上の分数では分からないからです。

駅からマンションへ向かって歩く後ろ姿のイメージ

そのうえで室内を整えるなら、準備は無駄になりません。売主として実際にどこまで手を入れて、どこに効果を感じたかはマンション売却の内覧準備に書きました。順番として、まず並びの中での自分の位置を知り、そのあとで室内に手をかける。買う側と売る側の両方を経験してみて、この順番が逆だったことに気づきました。

小杉恵のひとこと
買う側だったときの自分は、売主がどれだけ準備したかなど一切考えていませんでした。前面道路が狭い、駅から遠い、音がうるさい。そういう理由で、内見まで行かずに外した物件もありました。売る側に回ってから、あのとき自分が外した6件にもそれぞれ売主がいたのだと考えるようになりました。

よくある質問

Q. 買主はどのくらいの数を比較しているのですか?

A. 人によりますが、私の場合は7件でした。件数そのものより、同じ予算帯の中で相対的に比べているという点が重要です。1件だけを見て決める買主はほとんどいません。

Q. 眺望や線路の音など、変えられない条件はどうすればいいですか?

A. 条件そのものは変えられませんが、価格でその位置を調整することはできます。私が見送った物件も、価格が違えば結論が変わったものはあったはずです。変えられない条件を隠すのではなく、それを踏まえた価格設定になっているかを確認するほうが現実的です。

Q. 競合物件を見に行くとき、何を見ればいいですか?

A. 室内の作りより先に、駅から実際に歩いてみることをおすすめします。表示されている徒歩分数と体感は一致しないことがあるからです。そのうえで、自分の部屋と比べてどちらを選ぶかを客観的に考えてみると、価格が妥当かどうかの判断材料になります。

Q. 買主の希望は人によって違うのに、どこに合わせればいいですか?

A. すべてに合わせきることはできません。賃貸の募集でも、下駄箱の大きさを気にする人もいれば駐輪場しか見ない人もいました。全員の減点要因を潰すのは不可能なので、誰にとっても引っかかる要素(価格が相場から外れている、清掃が行き届いていない等)から優先的に手を打つのが現実的です。

Q. 入居者が住んだまま売る場合も、買主は同じように比較しますか?

A. 比較の材料が変わります。入居中のまま売る「オーナーチェンジ物件」では買主が室内を見られないため、この記事で書いてきた「並べて見比べられる」という前提自体が成り立ちません。買う側が代わりに何を見ているかはオーナーチェンジ物件を買う側のリスクにまとめました。

まとめ

買主として7件を見て、6件を見送りました。その理由の大半は室内ではなく、前面道路や駅からの体感距離、線路の音といった、玄関に入る前に決まっているものでした。買った1件は広さと眺望を気に入って選びましたが、そうやって中身で比べられたのは、室外の条件で脱落しなかった物件だけです。

そして買主は、1件を単独で評価しているのではありません。同じ価格帯の候補を横に並べて比べています。売主から見えないのはこの「並び」であり、自分の部屋がその中でどこに位置しているかは、内覧の報告からは分かりません。だからこそ、一度自分で競合を見に行く価値があります。

売却全体の流れは武蔵小杉でマンションを売却する完全ガイドにまとめています。買う側に立った経験がある方は、そのときの自分が何を見て何を外したかを思い出してみてください。それが、今の自分の部屋を見ている人の目線に一番近いはずです。

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この記事を書いた人
小杉恵

現役大家(宅建試験合格者)。武蔵小杉・川崎市・東京都内で投資用不動産(新築アパート・中古マンション・戸建)を自ら運用しながら、実体験に基づいた「分かりやすく正直な」不動産売却情報を発信しています。

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